2018年度の改定で最低賃金が単独全国最下位となった鹿児島県。連合鹿児島の下町和三会長は悔しさをにじませながら「なんとしても全国最下位から抜け出す」と決意を語る。理想は全国一律と述べつつ、現実的な格差解消策と、中小企業への支援が必要と話す。
――昨年の改定審議を振り返ってみると?
下町 18年度改定の最終盤、労働側は中央最賃審目安プラス2円で踏ん張ろうとしたが、結果的には公益側が使用者側の主張を受け入れた形となった。ふたを開けてみれば、鹿児島は単独の最下位。がくぜんとした。
単独最下位というのは非常にインパクトが大きい。特に最近、最賃に対する世の中の関心が高まり、何かニュースがあると「全国最下位の鹿児島は」と報じられる。そのたびに冷や汗が流れる思いでいる。
私の子どもが通っていた高校で昨年、知事と生徒の対話集会があり、そこで一人の生徒が「なぜ鹿児島の最低賃金は全国で一番低いのですか」と質問した。高校生が、ですよ。衝撃だった。
鹿児島県は高卒で就職する生徒の約半数は県外に出ていく。福岡や、飛び越して関西や関東に行く人も多い。大都市の実勢賃金が時給千円を超えている状況では、ますますこの傾向が強まるだろう。
今後、UターンやIターン、特定技能の外国人労働者が、「鹿児島で働こう」という気持ちがそがれてしまうのではないか。鹿児島を選んでもらえないのではないか、心配だ。
今年2月の県議会で三反園訓知事は「賃金は非常に重要。所得向上、最低賃金上昇へ全力を挙げて取り組む」という主旨の答弁をした。県内の多くの人々の思いをばねに、今年の改定では、なんとしても全国最下位から脱出したい。
●理想は全国一律…
――地域間格差をどのように考えますか?
今は新幹線が鹿児島まで延びたので、福岡県(814円)まですぐに行ける。賃金に格差があると、どうしてもそちらに行ってしまう。鹿児島県内の人手不足は深刻で、外国人労働者の方々に大勢来てもらっている。しかし、最近は求人数よりも、来てくれる人数が非常に厳しくなっているのが実情だ。
人手が足りないので運送会社では社長が自らハンドルを握らなければ回らないという話や、仕事の受注の依頼があっても、こなせる人員がいないため、断っているという話も聞く。
理想を言えば、最賃は全国一律がいい。ただ、そうするには、東京との224円もの格差を埋めるのは大変だし、地場零細企業への影響は大きい。十分な時間をかけ、環境を整備しなければならない。
●国はしっかり支援を
――大企業の内部留保はたまり続けています
大企業の膨大な内部留保は、90年代半ばに旧日経連が出した指針「新時代の日本的経営」を機に急増した非正規労働者と、下請けの低賃金労働者によって確保したものだ。
下請けの中小企業が、自分たちの努力で生み出した付加価値や、最賃上昇分を納入価格に転嫁できないのはおかしい。公正取引の確保と、内部留保の還元が必要だ。それが中小企業の賃上げにつながり、県内の消費拡大へと結びつく。
中小企業への支援策としては、雇用・社会保険料の負担軽減措置が有効だと思う。経営者団体と話をしていてもそう思う。減税は、中小企業の多くが赤字のため効果は薄いだろう。
政府の最賃の引き上げ方は経済政策的な色合いが強い。それならば国がしっかり支援しないと。最賃を上げられない企業はつぶれても構わないという政策では駄目だ。
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