東京の最低賃金は今年度の改定で千円の大台に乗ることが確実となっている。連合東京は2017年の大会で中長期的目標として1500円を目指す方針を打ち立てた。今春は傘下の単組など2千を超える組織が1500円以上、全国加重平均1000円以上とするよう要請する団体署名を労働局に提出している。岡田啓会長は「貧困と格差が広がる中、千円で止めてはならない」と述べ、東京が日本全体をリードする役割を果たすべきだと強調する。
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――方針策定の経緯は?
岡田 五輪開催までに千円実現というのが以前の目標で、そこで終わりでいいのかという議論があった。千円といっても、年収は、一日8時間、20日間働いて192万円に過ぎない。東京の状況を考えれば、千円が最終目標というわけにはいかないでしょう。
これだけ貧困と格差が広がる中、ここでブレーキをかけてはいけない。東京は物価が高く、特に家賃を考えれば千円で暮らすのは難しい。そうしたことを踏まえ、中長期的な目標として1500円を2年前に掲げた。「千円では満足しないぞ」という思いを改めて示した。
――なぜ1500円?
年収換算すれば288万円。東京で暮らすには少なくとも300万円は欲しいところだが、キリのいい額で1500円になった。連合のリビングウェイジ、米国の15ドルを求める運動も参考にした。
共働きも今の最賃の水準ではとても暮らせない。いつまでも子どももつくれない、育てられない水準のままでいいのか。
パート労働者や契約社員は今や職場の基幹労働者。彼らの時給を支えている最賃が、必要生計費に満たないというのはあまりに理不尽だ。私は流通産業出身でもあり、そのことをひしひしと感じる。
――連合の中では連合東京だけが1500円を掲げています
連合がいう「誰もが時給千円以上」という考え方は正しいと思う。では皆が千円となるために、先行する地方が足踏みして待つべきかというとそれは違う。現実に働いている人がいるのだから、その水準を引き上げなければならない。
●価値認め合う社会を
――中小企業にはどのような配慮が必要ですか?
経営者の中には5%の最低賃金の引き上げを主張している方もおり、私たちとしてはありがたいが、やはり段階を踏むべきだろう。また、別の経営者団体の方は、ご苦労されている中小企業を数多く見てこられているので、「数値ありきの議論はやめてほしい」という発言になったのだと思う。千円も払えない企業は淘汰(とうた)されてもいい、などという乱暴なことを私たちは考えていない。
川上から川下まで、労働の対価としての互いの価値を認め合い、中小企業に付加価値を適正に分配できる社会にする。価格転嫁や無理な納期の問題など改善していかなければならない。そのための環境づくりが必要だ。諦めずに言い続けていくしかない。
――全国一律制は?
ある程度の水準までは理解する。全国どこでも千円以上というのはわかるが、それが東京も含めて横並びで千円というのは最悪だ。そういうことを言い出す人も出かねない。私見だが、中央最低賃金審議会引き上げ目安の四つものランク区分が必要なのかは正直疑問だ。地域間格差を縮めないといけない。
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