東京・豊島区の小学校で子どもたちを見守り、安全確保に努めている学校開放管理員の業務について区は6月19日、民間委託する計画を正式に撤回した。管理員が加入する公務公共一般労組に同日、回答した。子どもの安全を脅かす事件が少なくない昨今、保護者や町内会などからも民間委託計画に疑問の声が上がっていたという。
●不審者への対応も
学校開放管理員制度は約20年前に始まった。豊島区は23区で最も公園が少なく、児童館も姿を消すなかで、学校を子どもらの「遊び場」「生活の場」と位置付け、放課後や休日に見守る職員(臨時職員)を配置することにした。行き場のない子どもが池袋などの繁華街で危険な目に遭わないようにする必要もあった。管理員は学校施設を利用する区民の安全や、施設の貸し出し業務も行っており、各校に原則2人を配置。現在54人が働いている。
子どものけがの処置や遊具の点検・修理、不審者への対処のほか、大雨・台風・地震といった自然災害の際には、学校で待機し学校長らと連携して対応する。登下校時に地域で見守る町内会役員らとの信頼関係づくりも欠かせない。
●人件費削減が目的
業務の民間委託が提案されたのは今年の2月半ば。来年4月にスタートする会計年度任用職員制度をにらみ、人件費コストを削減するためと説明された。
公共一般は管理員の過半数を組合に迎え入れるとともに、計画阻止に向けて団体交渉と署名活動を展開。署名は2カ月で3027筆集めた。学校施設の利用団体や町内会からも「直営でやるべき」などの声が上がり、署名への賛同が広がったという。
日常的には学校側からの指示と連携が求められる業務である。委託すれば業務請負の形となり、学校側が受託業者の社員に指示を行えば労働者派遣法違反(偽装請負)を問われる点についても追及した。
事態が動き出したのは3月のストライキ通告(時間内29分行動)から。併せて議会や区長への要請を強める中で、担当課が「労使合意なく民間委託は進めない」と回答し、6月には区として正式に委託断念を表明した。
公共一般の稲葉多喜生書記次長は「管理員の皆さんは子どもの成長を見守る仕事に誇りを持っている。それを一方的に委託しようとするなんて乱暴すぎる。計画断念に当たっては、町内会長や議会の尽力も大きかった」と語っている。
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