「あしたのジョー」の作者、漫画家のちばてつやさんが6月14日、都内で講演した。テーマは「憲法と表現の自由」。出版労連が主催し、130人が参加した。
●原点は満州での体験
「『戦争をもう二度としない』と定めている憲法を世界の憲法にしてほしい。(安倍首相ら)戦争を知らない人にいじってほしくない」
ちばさんには「紫電改のタカ」など反戦漫画の著作もある。現在80歳。講演では憲法への思いを語り、その背景にある満州での体験を紹介した。
「満州からの引き揚げでは、20万人が亡くなった。私たち家族は、父の同僚だった中国人男性が一冬の間、自宅にかくまってくれて助かった。その屋根裏部屋で弟たちに描いた絵物語が、作家としての原点」
引き揚げ船に乗って千葉県にある父の実家へ移ったのが1946年。到着した夜に感じた、「びくびくせず、いつまででも寝てていいんだ」といううれしさは忘れられないという。
一方で「引き揚げ者」に対する差別も経験した。「当時は食糧難で、人口が増えてほしくないという気持ちが人々にあった。満州にいた者は『戦中はぜいたくしていたんだろう』とも思われていた」
●ジョーにも戦争の影
こうした体験を踏まえ「戦争が終わって、すぐ『戦後』が来るわけじゃない」と語ったちばさん。
「『あしたのジョー』の舞台を日雇い労働者が多く集まる東京・山谷地区にしたのは、戦争孤児が多くいた街だから。東京大空襲で親を亡くした子どもや若者を描いてみたいと思っていた」
講演では、主人公の「ジョー」こと矢吹丈のイラストを描いてプロジェクターに投影。参加者を喜ばせた。
●表現の自由守れ
東京都が青少年健全育成条例の改正案を打ち出した際(2010年)には、表現の自由を守ろうと、反対運動の先頭に立った。そのことについて聞かれると、「(良書か悪書を決めるのは)読者の判断に任せるべき。権力に決めてほしくない」と述べた。
〈写真〉講演するちばてつやさん(6月14日、都内) 出版労連提供
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