――中小企業団体への議連のヒアリングでは皆、全国一律制に大反対でした。支持基盤が反発する政策にあえて挑戦するのはかなり勇気が要るのでは?
務台 猛反発でした。私のところにも地元の商工会議所が「務台さん、理屈はわかる。でもやめてくれ」と頼み込んで来られた。「理屈は分かる」と。だから、納得してもらえる対応策を考えないといけない。
いま経済産業省や厚生労働省に、世界では最賃を引き上げた際にどんな政策を用意してきたのか、あるいは、ありうるのか――について調べるよう宿題を出している。日本は、メニューはたくさんあるが、実際に使えるかと言うと、なかなかない。だから困っている。
成長戦略で党内で議論してきたのは大企業と下請けの取引慣行だ。下請けに対し非常に厳しいコストカットを要求する、私の地元でも大手自動車系列の下請けがあるが、「とにかくコストダウンの要求が強くて大変だ。その中で最賃を引き上げられると苦しい」と言われる。
難題だが、駄目だという理由の中に答えがある。大手自動車会社に最賃引き上げ分を正当なコストと認めさせ、下請けとの取引価格にその分を反映させた金額を適正価格とする。単価については(最賃引き上げ分を)加味したものでなければならないと、ある程度強制することが考えられる。
その上で、引き上げ分をどうカバーするか。衛藤先生が言うように大企業の内部留保金に課税して、その原資を中小の賃上げの補助に回すというリロケーション(再配分)もあり得るかもしれない。少し社会主義的な政策かもしれないが、議論すればいいと思う。
――韓国のように最賃引き上げのための中小企業支援策として数千億円規模の税金投入もありますか?
税金投入もあり得る。社会保険料(の負担軽減)もある。そのぐらいの規模でやっていいと思う。
2012~18年で最賃が加重平均で125円引き上げられた結果、パート労働者の賃金所得は1・22兆円拡大し、消費を0・92兆円押し上げたとの試算もある。消費拡大効果や税収増を考えれば国の助成措置は大したことはない。定量的に分析していくべきだ。
どうやってデフレから脱却するかの答えは購買力を上げることにしかない。将来不安で貯蓄に励まなければならない状況では、いつまでもデフレから抜け出せない。特に最賃の引き上げは消費を喚起する効果が高い。「どこに突破口を見出すか」という議論が必要だと思う。
●連合に「期待します」
――労組にいいたいことはありますか?
連合の動きがよく分からない、申し訳ないけど。全労連は明快な理屈で全国一律制と引き上げの必要性を主張している。でも連合が分からない。神津会長には最初にヒアリングで話してもらおうと声をかけたが、「組織の事情」との理由で来られなかった。固いね。立派なほど固い。建前の世界が横たわっているように感じる。
地方ごとに政労使の3者でやっているから、その枠組みで決める美しい姿を崩したくないということか。結果的に底上げに背を向けていることになるとすれば、それは労働者への配慮に欠けるように思う。労働者のために何がいいのかを考えないといけないのに。自分たちの立場を守るために労働者を犠牲にしているように見えてしまうのは、不幸なことだと思う。
特に最賃は、組合の庇護(ひご)のない未組織労働者や非正規労働者に直接影響する。未組織労働者の利益を労組が代表できているのか、大きな疑問だ。
それならば政府・与党でやっていくしかない。連合が役割を果たせないのは寂しいことではないかな。同情しますが、期待します。
――党内の議論は?
いろんな議論がある。いきなり結論を出すより、いろんな論点を吸い上げて、時間をかけて熟成させる必要がある。一元化は2年や3年では無理だから。10年ぐらいかけて議論し対策を講じて納得づくでやらないといけない。年に3%ずつ引き上げ、一元化に収斂(しゅうれん)していくイメージ。議連で突破口を開きたい。
――流れはできますか?
だんだんよくなっていくと思う。労働力が不足している今は、賃金を引き上げられる環境にある。労働力が余っていればできない。今やらずにいつやるんだ、と訴えていきたい。
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