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    Q&A/非正規職員の業務を民間委託?/総務省マニュアル/自治体に混乱招く恐れも

     総務省は、会計年度任用職員制度の導入に関わる事務処理マニュアル(Q&A)の内容を追加し、6月10日に通知した。非正規職員を新たな制度に移行させず、これまで担ってきた業務を民間委託してもいいと読める。新制度導入に向けて準備している自治体に混乱を招く恐れはないのだろうか。

     

    ●島田市の事態を受けて

     

     Q なぜ今、追加したの?

     A 今年3月、静岡県島田市が会計年度任用職員制度を回避するため、非正規職員の業務を民間委託しようとした計画が頓挫した。与党を含む全会派が関連予算案を否決したんだ。この事態を受けてQ&Aの内容を追加した。

     Q どういうこと?

     A 二つの可能性が考えられる。一つは、財政が厳しいことを理由に、新制度への移行を回避してはならないことを徹底するため。島田市のような対応は駄目という意味だ。

     

    ●民間委託を諦めず

     

     Q もう一つは?

     A 現在、自治体の多くは新制度導入に向けて準備中だ。中には業務の民間委託を検討する自治体もあったが、島田市で頓挫したため、その動きにストップがかかったといわれている。総務省は以前から、民間委託推進の旗を振ってきた。今回の追加は、民間委託という選択肢があり得ることを、あらためて明らかにしたのだとみることもできる。

     Q 自治体は迷うかも。

     A そうだね。「十分な検討をした上でなら民間委託してもいいんだ」と受け止めないよう、自治体側に念押ししておく必要がある。Q&Aの回答の後半部分、つまり「島田市のやり方をまねるな」という点を共通認識にしたい。

     Q でも、民間委託の可能性は残る。

     A 効果や効率性だけで民間委託の是非を判断するのは安易過ぎる。東京の足立区では戸籍窓口業務の民間委託について、職員が委託会社社員に業務指示する仕組みが、東京労働局から「偽装請負であり、労働者派遣法違法」とされ、是正指導を受けている。公共サービスを民間委託すれば、同じ問題が起きかねない。

     

     〈用語解説〉会計年度任用職員制度

     

     臨時職員、一般職非常勤職員、特別職非常勤職員と名称も任用(雇用)根拠も異なる非正規職員を一本化する新たな制度。契約期間を「上限1年」と明記するなど改悪部分がある一方で、一時金(期末手当)の支給を可能にしました。来年4月の実施に向けて、遅くても9月議会での条例改正が求められています。ただ、新たな一時金支給などに必要な財源をどうするかが課題。総務省は財源措置を行うというものの、予断を許しません。島田市のように、民間委託によって新制度導入を回避する動きも懸念されています。