精神・神経疾患や、筋ジストロフィー症などの筋疾患を専門とする国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター(NCNP)で働く看護師ら7人が「特殊業務手当」の一方的な廃止・減額は違法だとし、手当の全額支給などを求めて6月17日、東京地裁に提訴した。
原告は全日本国立医療労働組合(全医労)武蔵支部の組合員。手当は5年かけて段階的に廃止する計画。現在、2年目で40%削減されている。
当局が手当廃止に関わる資料開示を拒否するなど不誠実な対応に終始したことについて、原告は労働契約法10条(就業規則変更の条件)に反すると訴えている。
●特殊性は高まっている
原告の一人、看護師の田村典子支部長は約35年間、NCNPで働いてきた。「経済的な理由で病院にかかれない人や病状が重く民間病院で断られた人も受け入れている。指一本、体を5センチ動かすことが困難な患者さんたちの看護をしている。年々、仕事が大変になり特殊性は高まっているのに、手当を廃止するとは。病院側は現場の声を理解していない」と訴えた。
田村支部長が勤務しているのは医療観察法(制度)病棟。心神喪失状態で重大な加害行為をした患者を地方裁判所の審判に基づき、治療・看護を行っている。社会復帰のための外泊練習に付き添うこともある。
●他への波及とめたい
野村昌弘全医労関東信越地方協議会担当書記は「地域手当や職員駐車場料金などの変更と一緒に、どさくさに紛れて手当廃止を強行した。他の手当については根拠となる資料が提示されたが、特殊業務手当に関しては口頭のみで資料を出さない。不誠実だ」と憤った。
組合によれば、筋ジス症などの治療を行う民間病院の大半で「危険手当」などの名称で同様の手当が支給されている。独立行政法人国立病院機構の他の病院には特殊業務手当がある。
田村支部長は「NCNPで手当廃止を許せば国立病院機構の他の病院にも波及しかねない。ここで踏ん張らなくては」と強調した。
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