冠婚葬祭大手ベルコに対し、同社と業務委託契約を結ぶ「代理店」に雇用された2人の元従業員(FA)が雇用を打ち切られたことについて団体交渉を求めている問題で、北海道労働委員会は6月13日、契約上、大本の委託元であるベルコの使用者性を認め、救済を命じた(概念図)。2人の就労措置と労働条件の継続、バックペイ(賃金の遡及支払い)、労組との誠実な交渉対応、支配介入の禁止、再発防止の宣誓書の掲示――など、組合側全面勝利といえる内容だ。
全ベルコ労働組合(情報労連加盟)と弁護団は同日、「斬新かつ画期的な判断をして歴史に残る命令」「『雇用によらない働き方』を強いられて苦しむ労働者にとって、希望をつなぐ救済命令」だと歓迎する声明を発表している。
●代理店は組織の一部門
ベルコでは、各地の互助会募集や営業について「代理店」と業務委託契約を結び、代理店と雇用関係にある従業員(FA)が実際の業務を担当している。札幌市内で勤務していた2人のFAが組合結成を準備していたところ、2015年1月、実質的に雇用を打ち切られた。
2人が加入する全ベルコ労組と連合北海道地域ユニオンは、経営の実権を握るベルコに団交を求めたが、「雇用関係にない」と拒否したため、救済を申し立てていた。
道労委では、ベルコの使用者性が問われた。
命令書は、契約上独立事業者である「代理店」について、ベルコから指揮命令を受け、経営状況や成績などを査定されるほか、人事異動まであり、報酬も歩合給の域を出ていないことなどを指摘。代理店の従業員であるFAの採用や雇用終了、賃金にもベルコが強く関与していた事実に言及した。
そのうえで「代理店を会社の組織上の一部門とみなし得る実態があり、その代理店に属するFAも実質的には会社の指揮命令下にある」として、ベルコの使用者性を認定。2人の雇用を打ち切ったことと、団交を拒否したことを不当労働行為と断じた。
救済方法については、2人が所属していた代理店が既に閉鎖されているため、札幌市内にある別の代理店で、当時の労働条件のまま同じ職務に従事させることが適当とした。バックペイについては15年2月から職場復帰までの賃金支払いを命じている。
●狙いは使用者責任逃れ
弁護団などによると、ベルコは正社員がわずか32人で、残る7千人以上が、業務委託契約の代理店と、その下で雇用契約を結んで働いている。こうした契約にすることで、使用者責任を免れようとしているものとみられる。
並行して行われている地位確認訴訟は昨秋、原告全面敗訴の判決が札幌地裁で出され、現在高裁で係争中だ。
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