家族の介護責任や、持病があることを知りながら遠隔地配転を命じた上、応じると表明した直後に解雇したのは違法無効だとして、米国製薬会社「マイラン」日本法人東京本社に勤務していた管理職の女性2人が6月11日、同社に対し、地位確認と賃金の支払いなどを求める裁判を東京地裁に起こした。
訴状や支援する東京管理職ユニオンによると、同社は2017年5月、業務がなくなることなどを理由に退職勧奨を行った。原告らが拒否すると、同社は備品のノートパソコンや携帯電話を取り上げ、会社から閉め出したという。原告は同月、ユニオンに加入した。
●持病ある社員にも
その後、原告らが従事していた業務に新たに人を補充するなど、退職勧奨の根拠が崩れる中、同社は18年8月、福井県勝山市にある事業所への配転を命じた。原告の一人には介護が必要な家族がおり、もう一人は持病があって自動車の運転が困難だとして、労使交渉で異議を述べた。だが、会社は繰り返し配転を指示。12月、2人が転勤に応じる意思を表明した直後、同社は解雇した。
代理人の中野麻美弁護士は「国は介護や病気を抱えていても働けるよう指針の改善などを行ってきたが、こういう事態が許されると、労働者は介護責任を果たせなくなり、健康障害が深刻化する。『生きるか、(配転命令を)のむか』の厳しい選択を余儀なくされる」と警鐘を鳴らす。
新村響子弁護士も「(育児休業明けの男性社員に遠隔地配転を命じた)カネカの件で批判が起きている。介護でも配転していいのかということが問われなければならない」。
訴状は、原告の勤務地が契約で東京本社とされていることや、配転命令に業務上の必要性も合理的根拠もないことを挙げ、組合員として活動する原告らの排除を目的とした支配介入・不利益取扱いであり、解雇と配転命令は違法・無効としている。
原告の一人は「あまりのストレスで持病が再発し、1カ月絶対安静の状態になった。医薬品メーカーなのに社員の健康をないがしろにするとは医薬業界の風上にも置けない」と厳しく批判した。
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