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    沖縄レポート/二重植民地状態にある苦悩/「令和元年」騒ぎの裏側で

     奇妙な国、奇妙な国民ではないか。「令和元年」「令和初の…」とお祭り騒ぎのように喜ぶが、元号のなんと不便なことか。行政文書は何十年も先の計画まで元号で記され、NHKは世界史的事件を平成何年に起きたなどと報じる。いちいち計算しないと何年か前かも分からない。

     天皇制や元号を日本の伝統と誇る一方で、新天皇になって最初の国賓はやはり、今も事実上の占領国である米国大統領だった。宗主国にこびるリーダーは、まるで植民地の独裁者のよう。それを、この国のテレビメディアは大喜びで報道していた。

     

    ●有機フッ素化合物問題

     

     沖縄はその日米の二重植民地の苦悩の中にある。どんなに民意を示しても無視され続ける名護市辺野古の新基地建設工事はもちろんのこと、それ以外にも二重植民地であることを日々痛感せざるを得ないことばかりだ。そんな中で、県民を悩ませる新たな問題が起きている。

     米軍嘉手納基地、普天間飛行場の周辺の浄水場や河川から高濃度の有機フッ素化合物(PFOS、PFOA)が検出されたのは、2016年1月。沖縄県企業局が水質調査の結果を公表したのだ。国内の自然環境での値の60倍もの濃度だった。発がん性があるとされ、国際条約で製造、使用が制限されており、国内には安全基準がない。米軍が使っている泡消火剤に含まれているというのに、県も市町村も日米地位協定に阻まれて基地内への立ち入り調査ができず、手の施しようがない状態だ。

     その後、周辺の地下水からも検出され、周辺住民はずっと不安にさらされていた。今年5月には、京都大医学部のチームが宜野湾市の周辺住民のPFHxSを含む有機フッ素化合物の血中濃度を調査した結果が明らかになった。沖縄本島南部の南城市住民、さらに全国平均と比較すると、PFOSは南城市が全国の2倍、宜野湾市は4倍、PFHxSは南城市が全国の33倍、宜野湾市が50倍という驚くべき結果だった。

     

    ●日米地位協定の無力

     

     日米地位協定は若干の運用見直しがなされてきたが、今回の問題では無力である。政府は国内で製造、使用がないとして安全基準の策定すらしようとしない。無為無策としか言いようがない。沖縄住民の命は明らかに軽視されている。

     今年は、日本国民一般にとって「令和元年」として記憶されるのだろうか。沖縄にとっては、薩摩藩の軍隊が侵攻して琉球を実質的に支配下に置いた1609年の「薩摩侵攻」から410年、琉球王国が消滅して日本に組み入れられた1879年の「琉球処分」(最近は「琉球併合」と呼ぶ)から140年の年である。

     ある本土メディア幹部に「9のつく年は沖縄にとって特別な年です」と話したら「全く知らなかった」と驚いていた。薩摩侵攻、琉球処分はおろか、米軍統治や日本復帰のことも知らない若い世代が沖縄でも増えている。地元メディアや学校教育の課題でもあるが、全国一律の教育、報道の中で伝えきれていないことは事実だ。これもまた植民地の一側面である。(ジャーナリスト 米倉外昭)