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    時の問題/パワハラ規制、ようやく法制化/条約批准には再改正が必要

     パワハラの防止措置義務を定める改正法が成立しました。国が議論を始めてから8年を経てようやく実現しました。しかし、禁止規定がなく、6月に採択予定の国際労働機関(ILO)の「仕事における暴力とハラスメント(嫌がらせ)に関する条約」を批准するには、さらに法改正が必要です。

     今や労働相談で毎年トップを占めるハラスメント。過労死の多くがこの問題をはらんでいるといわれるほど、心身への悪影響は深刻です。ILOが80カ国に聞いた調査では、60カ国が職場の暴力やハラスメントへの規制を整備済みで、日本の立ち遅れが際立っていました。

     改正法はパワハラを「優越的な関係を背景にした言動で、業務上必要な範囲を超え、労働者の就業環境が阻害されること」と定義。事業主に対し相談窓口の設置や啓発など防止措置を義務付けます。具体的な対応策については今後、指針などで定める予定です。

     法制化は大きな一歩といえますが、適用される対象は狭く、禁止規定は盛り込まれませんでした。

     一方で、ILO条約案は「加盟国は仕事の世界における暴力とハラスメントを禁止するための国内法令を採択すべき」と禁止規定の法制化を明確に打ち出しています。ハラスメントを身体、精神、性などに分けず包括的に定義し、雇用類似の就労者や求職者をも対象としています。

     条約を批准するには、禁止規定を設けるなど新たな法改正が必要です。

     日本政府は昨年の総会で条約案に対する賛否の表明を「保留」するとともに、後ろ向きな主張を繰り返したといいます。今年も米国と同様に、世界の足を引っ張る恥ずべき対応をするのか、それとも対応を改めるのか、が注目されます。