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    譲歩重ねる日本でいいのか/アジア太平洋資料センター(PARC)共同代表 内田聖子さん

     トランプ米大統領と安倍首相による会談が5月27日に行われた。日米貿易交渉の行方が話題になり、トランプ大統領は8月の合意を示唆した。今回の首脳会談をどう見るか、貿易問題を監視している市民団体、アジア太平洋資料センターの内田聖子共同代表にコメントしてもらった。

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     今回の日米首脳の話し合いでは多分、何も決まっていないと思います。日米交渉をすれば、日本が譲歩を迫られるのは明らかで、政府も先刻承知のはず。決まっているのは、合意内容の発表が参院選後になるということでしょう。

     首相らが考えているのは、米国に差し出す項目、つまり日本の被害をどれだけ少なくするかだけで、最初から負け戦。だから首相はゴルフや大相撲、炉端焼きなどでトランプ大統領のご機嫌取りに精を出したのだと思います。とても屈辱的です。

     農産物では、米国抜きのTPP11で合意した関税撤廃・削減の水準達成は当然として、それにどれくらい上乗せするかが焦点。関税以外に「アクセス米」など輸入数量枠の拡大にも注意が必要です。

     自動車については、新たな北米自由貿易協定(NAFTA)で強化した、部品の原産地規則が日米協定に持ち込まれないかが心配。例えば、中国製の部品を多く使ったエンジンの車は認めない(高関税を掛ける)など、いろんなことを言ってくるでしょう。

     問題は、譲歩を重ねて合意した内容の詳細を、政府がすぐに公開するのかどうかです。情報が公開されなければ、私たちは精査することができません。

     農産物と自動車はほんの入り口です。デジタル経済や知的財産権、食の安全、紛争処理システムなど、幅広いサービス分野を含む交渉が今後始まります。譲歩を重ねる日本政府の姿勢ではとても心配です。