東京電力は廃炉作業が続く福島第1原発に「特定技能」の外国人労働者を受け入れようとしましたが、このほど見送りを決めました。被ばく労働や外国人労働者支援に携わる市民団体や専門家は、人手不足を外国人の使い捨て労働で賄うべきではないと指摘しています。
●「嫌なら帰れ」
「特定技能」は昨年、入管法改正などで新設された在留資格。1号は、非熟練で、ある程度の日常会話ができる日本語能力があればよいとされ、外国人技能実習生からの移行が想定されています。2号は熟練技能が必要で、家族の同行が可能。建設、造船の2業種が決まっています。
外国人労働者の支援に携わってきた指宿昭一弁護士は、特定技能と技能実習が非常によく似た仕組みだと説明したうえで、原発への受け入れの問題点を次のように述べます。
「奴隷的な状態で働く、物が言えない労働者だということ。母国で多額の借金をして来日するため、強制帰国を恐れ、危険な作業を拒否できない」
2012年には福島第1原発の復旧作業を請け負った下請け会社が、被ばく量を少なく見せるため、線量計を鉛で覆うよう従業員に指示した事件が発覚しました。従業員に対し「嫌なら帰れ」と述べたと報じられています。外国人労働者がこうした指示を受けた場合は拒否できないだろうと、同弁護士は指摘します。
言葉の壁も深刻です。放射性物質防護マスクを装着すると、日本人でさえ言葉が聞き取りくいといいます。平時の定期検査と異なり、日々異なる指示にきちんと対応できるかも疑問。危険を認識しにくいのです。
晩発性の病気への補償も十分ではありません。帰国して数十年後に白血病など被ばくが原因の病気を発症しても、労災補償を受けられる保証はありません。
●東電は断念していない
廃炉作業をめぐっては、多重下請け構造の下、賃金や危険手当などが数次にわたって「ピンはね」され、実際に危険作業を行う労働者の手元にはほんのわずかしか残らないという問題や、違法派遣、労災隠しの横行が指摘されます。
受け入れ理由である人手不足を解消するには、こうした業界の悪弊を正し、発注元である東電がしっかりと責任を負う仕組みづくりが欠かせません。格安の「使い捨て労働」で賄うのではなく、処遇や就労環境をきちんと整備することが、今後長期間続く廃炉作業を安定的に進める上でも大切です。
特定技能の外国人労働者受け入れについて、東電は断念してはいません。政府も容認しています。安易な受け入れをさせないよう監視が必要です。
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