地域別最低賃金の全国一律制実現をめざす自民党の議員連盟は5月22日、国会内で1カ月半ぶりに会合を開いた。全国町村会の荒木泰臣会長(熊本県嘉島町長)にヒアリングを行い、同会長は「全国一律制は将来的には実現が望まれる政策課題だ」との見解を表明した。同議連はこの日、中間的な論点整理案を公表。「生計費調査に基づく最賃水準の検討」などを今後の論点に挙げている。
同議連はこれまで、元米金融大手社員で最賃について提言しているデービッド・アトキンソン小西工藝社長による講演や、日本弁護士連合会、厚生労働省、全労連のヒアリングを行ってきた。
荒木会長は、同会の最賃担当者約20人に全国一律制について聞いたところ、賛否両論が示されたと報告。中小企業の経営体質の強化や、段階的引き上げと激変緩和措置を前提に「人口流出を抑止し、定着を促す利点がある。将来的には実現が望まれる政策課題だ」と語った。
一方で、「安易な一元化はさらなる脆弱(ぜいじゃく)化を招きかねない」とも述べ、地方の中小企業への十分な配慮を繰り返し求めた。
衛藤征士郎会長は「450兆円近くある一部上場企業の内部留保が自然に流動して、下請け、中小零細企業、国民に移行していくにはこれ(全国一律)しかない。生産性向上、賃金のベースアップによる経済好循環実現の起点は最低賃金だと思う」と述べ、「経済の底上げへ、全国926の町村が動けるかどうかにかかっている。ぜひ町村会にも頑張ってもらいたい」と〃共闘〃を呼びかけた。
●生計費調査を重視
同議連はこれまでのヒアリングを受け、中間的な論点整理案を示した。最賃制度の趣旨を踏まえ、今後検討すべき論点として(1)生計費調査に基づく水準の検討(2)生産性向上に資する制度設計(3)下請け適正取引政策(4)経済政策・地域政策・国土政策としての位置づけ――を指摘している。
海外の制度について「主要国中、地域別最賃を採っているわが国は極めて例外的」と記載。最賃を引き上げる際の中小企業支援策として賃金や社会保険料の直接助成も「検討に値する」とした。
現行法が定める最賃決定考慮要素の「支払い能力」に疑問を投げかけ、「想定以上に現状肯定の結果をもたらしかねない」と、引き上げの重しになっているとの認識を示している。
〈写真〉最賃議連は「全国一元化」へ長期の計画が必要と強調した(5月22日、国会)
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