ダブルジョブなどを行う複数就業者の労災補償のあり方を議論している労働政策審議会・労災保険部会が5月16日行われ、広く補償を求める労働側と、慎重な議論を求める使用者側とで意見が分かれた。給付と認定のあり方が主なテーマ。
政府の未来投資会議が昨年、副業・兼業の促進に併せ、労働時間管理と労災補償のあり方などの検討方針を示して以降、同部会で審議を重ねている。
論点は(1)複数の事業所で労働時間を合算しないと労災認定基準に届かない場合、労災認定されない現状をどう考えるか(2)現行制度では、労災の原因となった就業先の賃金のみを基に補償額を算定するため、十分な補償が得られないのではないか――など。
総務省の調査によると、副業をしている人の3分の2が年収299万円以下で、非正規労働者だと9割に上る。低収入ゆえに複数の仕事を掛け持ちせざるを得ない人々の労災補償は切実な課題だ。
労働側委員の村上陽子連合総合労働局長は「政府が副業・兼業の旗を振るべきではないが、現に複数の就業先で働いている人がいる以上、労災に遭った場合の給付のあり方は早く議論すべき課題だ」と早期の対応を求めた。
一方、使用者側は「慎重な議論を」(輪島忍経団連労働法制本部長)との意見や、事前に副業の申請を行った人に限り労災補償の増額を認める主張など、補償の拡大に抵抗している。
〈写真〉複数就業者へのセーフティーネット整備は喫緊の課題(5月16日、厚生労働省)
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