民間放送局や番組制作会社などの労組でつくる民放労連の春闘回答集計(4月5日時点)で、経営の先行き不安が叫ばれる中でも、若年層を底上げするベアの獲得が報告されている。放送局構内で働く制作会社社員や派遣労働者の賃上げ原資を、親会社労組が求め実現した成果もある。
同日段階で72組合9支部が回答を引き出した。うちベア獲得組合はほぼ昨年並みの12組合2支部。有額回答の平均は手当込みで前年同期比428円減の7755円となっている。
2018年度の業績が伸び悩んだことと、老朽化に伴う設備投資が必要になったことで、経営側の対応は総じて厳しかったという。在京キー局は軒並みベアゼロ、在阪準キー局は時限ストを交えながら交渉中だ。
一方、地方局はTVQ九州放送が22~33歳に3千~700円のベア、山梨放送が2500円のベア、テレビ山口は30歳以下に2500~1500円上積みするなどの回答を引き出している。
テレビ山口は7年ぶりのベア回答。競合する後発局より初任給が低く、回答前にスト権を立て、ベアゼロならばストに入ると通告して回答を迫ったという。
斉田公生書記長は「放送局では内定辞退が相次いでいる。比較的賃金の高い基幹局でも、4人に内定を出して全員が辞退したところがある。(人材確保の)間口を広げなければならない、と経営側に訴えた」と話す。放送産業は長時間労働が敬遠され、人材確保は差し迫った課題となっている。同書記長はあと10組合ほどベア獲得組合が増えるのではないかとみる。
●単価アップ要求が結実
民放労連は近年、放送局構内で働く番組制作会社などの従業員や派遣労働者の処遇改善を重視し、今年も成果が報告されている。九州朝日放送の子会社KBC映像ではベア2千円、読売テレビの子会社よみうりテレビサービスで事実上のベア500円など、親会社労組が自社経営陣に派遣料・外注費単価の引き上げを求めることで成果につなげている。
京都放送労働組合は、派遣労働者の時給引き上げと交通費支給、そのための派遣料金引き上げを求め、会社側もこれに応じた。昨春闘で時給引き上げを実現、今年は初めて交通費支給を引き出した。交通費が支給されない派遣業界の現状に一石を投じる取り組みだ。
このほか多数の組合で、非正規労働者や構内スタッフへのQUOカードの配布や奨励金支給を勝ち取った。
働き方関連法の対応では、年休5日取得義務化の施行に伴い、5日間取得した社員に5万円を支給することで法対応を進めるなどの回答も報告されている。
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