「機関紙連合通信社」は労働組合や市民団体の新聞編集向けに記事を配信しています

    インタビュー/〈ILO100周年〉(6)/海外関連企業に適正な単価を/郷野晶子労働者側理事に聞く

    (6)国際労働機関(ILO)理事として、日本の政労使に考えてほしいことはなんですか?

     

     政府に対しては、ILOが求めている中核条約の批准を求めたい。日本は105号(強制労働禁止)と111号(差別待遇禁止)を批准していません。

     加えて、公務員労働者に関する自律的労使関係の確立です。個人的には、まず、消防職員の団結権確保が重要だと考えています。今職場にある消防職員委員会に対しては、職員から不十分だと不満が出されており、労働組合が絶対に必要です。

     使用者に対しては、自らのサプライチェーンの関連企業などに対して責任があることについて、認識を強めてほしい。特に海外の発注先企業への責任を果たすことが求められます。発注条件として、基本的な労働基本権の順守を求めることが大切です。また、発注単価が低ければ、相手企業でまともな労働条件を維持できないと認識し、適正単価を考慮すべきです。

     労働組合、特に企業別労組の皆さんには考えてほしいことがあります。

     日本国内の労使関係はパートナーシップ型ですばらしいと思いますが、今、敵対的労使関係がアジアなどに浸透し始めています。日本の海外事務所では、パートナーシップ型、社会対話型の労使関係モデルをつくってほしい。

     日本の経営者は現地任せの姿勢が強く、労使関係をどうするかの意識が薄いようです。やはり労働組合の働き掛けによって、対話型のモデルを構築すること。そうした努力を通じて、ILO条約が守られる土壌ができていくのではないでしょうか。(終わり)

     

     〈メモ〉消防職員の団結権を認めていない国は日本だけ。ガボンとスーダンが80年代以降に団結権を付与したためです。この他、軍隊や警察組織と一体になっている場合は、例外として団結権付与を認めなくてもよいとされていますが、ILOは日本の消防組織について軍隊や警察組織には含まれないと判断しています。日本は団結権保障を定めた87号条約を批准しており、ILOは日本政府に対し、条約違反だとして何度も団結権保障を勧告してきました。