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    〈ILO100周年〉(5)/経済より「人間」を中心に/郷野晶子労働者側理事に聞く

    (5)100周年に当たって国際労働機関(ILO)が打ち出した「仕事の未来」提言とは、どんな内容ですか?

     

     100周年に向け、ILOは2017年に仕事の未来世界委員会を発足させ、今年1月に報告書をまとめました。この提言を踏まえ、6月の総会で宣言を採択することにしています。

     ポイントは「人間中心のアジェンダ(行動計画)」を提起したことです。これまでのような経済発展中心の考え方ではなく、「人間中心」を機軸に据えるということ。そのために(1)人間の潜在能力(2)仕事に関わる制度(3)ディーセントで持続可能な仕事――そのそれぞれについて投資の拡充を求めています。

     やや抽象的な表現ですが、具体的にどうするかは、各国の政労使の社会対話を通じて実現してほしいと言っています。

     

    ●AI導入で労使協議を

     

     例えば、国内総生産(GDP)以外のさまざまな指標でものを見ようと提案しています。視点を変えようというわけです。

     指標として、家事などのアンペイドワーク(無給労働)や環境、医療コスト、平等や分配の度合いなどが挙げられています。

     人口知能(AI)や、身の回りのあらゆるものをインターネットにつなげる技術(IoT)で仕事のあり方に変化がもたらされます。その場合に機械任せではなく、人間がちゃんと決定することを重視しなければなりません。導入に際し、労使協議を行うことが大切です。

     さらに、クラウドワーキングの問題もあります。インターネットを通じて仕事と働き手をつなぐものですが、労働を統治する機能があるのか心配です。

     今や、国際的なネットワークによって世界にこの種の分業が広がっており、どんどん賃金が下がる恐れがあります。これをどうやって監視・制御し、労働条件を守るか――労働組合にとって大きな課題になると思います。

     

    ●ハラスメント根絶へ

     

     100周年に当たってはもう一つ、6月の総会で仕事の世界における暴力とハラスメントの根絶に関する条約を採択する予定です。こちらについても注目していただきたい。

     昨年の総会で第1次討議が行われ、勧告付きの条約とすることが合意されました。「暴力とハラスメント」を身体的、精神的、性的または経済的危機を引き起こす許容しがたい行為と定義しています。対象となる「労働者」は契約上の地位にかかわらず働く人々を含むとし、広範囲となっています。さらに、「加害者及び被害者」に取引先や顧客などの第三者を含めることとしています。条約として批准されれば、政府は暴力とハラスメントを禁止する国内法令の採択を求められ、法の整備が期待されます。(つづく)

     

    〈写真〉「仕事の未来」冊子の表紙