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    沖縄レポート/政府はまるでDV加害者だ/民主主義無視の埋め立て工事

     知事選で勝利すれば工事を止められる、という希望が玉城デニー知事を誕生させた。政府は無視した。工事を止めたいという願いが県民投票に託され、あらためて民意を示した。これも政府は無視した。国会論戦は無残極まりない。日本の民主主義は死にひんしている。

     

    ●無力感に陥らせる?

     

     沖縄の地元紙の投書欄に、従来のいじめの例えに加えて、児童虐待や家庭内暴力(DV)になぞらえて政府を批判する意見がしばしば載るようになった。「おまえを愛しているから殴るんだ」とうそぶく夫や父親に例えられるのは、安倍晋三首相、菅義偉官房長官、岩屋毅防衛相であろう。沖縄県の埋め立て承認撤回の効力停止をした石井啓一国土交通相は虐待ほう助の役回りである。

     政府は沖縄住民を「学習性無力感」に陥らせようとしているようだ。犬の実験から示された心理学用語で、抵抗や回避の困難なストレスと抑圧の下に置かれ続けると、「何をしても意味がない」ということを学習し、逃れようとする努力すら行わなくなることを言う。DVや虐待の被害者にしばしば表れるという。

     県民投票で埋め立てに「賛成」した人たちの間では「政府がやると言っているのだから反対しても止められない」という声が多かった。これが学習性無力感なのかどうかは簡単には言えない。単純な二者択一で計れないものが沖縄の歴史にはある。ニヒリズムに陥らず、したたかにあらがい続けた歴史の蓄積を、あらためて問い返したい。

     

    ●統一地方選で争点化を

     

     県民投票の結果を受けて玉城知事は対話を求めたが、政府は工事の一時停止要求をはねつけ、事実上決裂した。沖縄県は追い詰められ、3月22日、再び訴訟を起こした。

     これまでの流れで明らかなように、司法の場で最終決着がつくことはない。ベトナム戦争を終わらせたのが国際世論だったように、辺野古の海の破壊を止めるのは日本の世論、国際世論しかないのであろう。

     岩手県議会が25日、「沖縄県民投票の結果を踏まえ、辺野古埋立て工事を中止し、沖縄県と誠意を持って協議を行うことを求める」との意見書を賛成多数で可決した。沖縄以外の都道府県議会で初めてである。26日には東京都武蔵野市議会でも同様の意見書が可決された。

     沖縄の市民グループは25日、米軍普天間飛行場の代替施設の必要性も含めて候補地を国民全体で議論し、民主的に決めるよう働き掛ける陳情を全国1788地方議会に提出した。全国の地方議会に当事者意識を持って議論するよう求めるものだ。同趣旨の意見書は昨年12月に東京・小金井市、今年2月に同・小平市で可決されている。

     4月の統一地方選で沖縄の基地過重負担が話題になるだろうか。ぜひ争点にしてもらいたい。日本の民主主義を復活させるために避けられない課題である。(ジャーナリスト 米倉外昭)

     

    〈写真〉県民投票の成功を受け、工事の中止を求めた県民大会。「土砂投入をやめろ」「民意は示された」のステッカーを掲げた(3月16日、那覇新都心公園)