厚生労働省の「医師の働き方に関する検討会」は3月28日、地域医療に従事する勤務医の時間外労働上限を年1860時間と定める報告書をまとめた。勤務間インターバル制度などの健康確保措置を義務付けた上で2024年度からの導入を目指すという。
報告書は「国の医療が医師の自己犠牲的な長時間労働で支えられている危機的な状況」との認識を示し、医師が健康で働き続けられる社会を目指すべきであり、国民の理解や医療提供に関する各施策との総合的な改革が求められるとした。一方、診察・治療の求めを拒んではならないとする医師法第19条の応召義務や技術革新を踏まえた時間外労働規制にするべきとしており、長時間労働の温存に含みを持たせた。
報告書は地域医療を担う勤務医の時間外上限を年1860時間に設定。対象となる医療機関は、救急医療などの条件によって都道府県が指定する。高度技術の研鑽(けんさん)が必要な若手医師なども同じ水準だ。一般的な医師の場合は、休日を含めて年960時間を上限と定めた。
併せて設けた健康確保措置は(1)28時間連続勤務が上限(2)通常日勤後の勤務間インターバル(9時間)(3)代償休息(4)時間外が月100時間を超過する前に面接指導の実施――などだ。
この日の検討会で特定社会保険労務士の福島通子氏は、時間外上限は長時間労働是正の出発点だと評価し「賛否両論あるが、批判を繰り返すのではなく(一般労働者と同じ上限の)目標に到達するよう努力すべき」と述べ、制度の意図を周知するよう求めた。
医師の三島千明氏は上限時間による長時間労働の助長を懸念し「労働関係法令を周知すべき。勤務医と経営者の研修をあらためて要望したい。(それが)患者の安全、安心に通じるという意識が重要」と述べた。
東京大学大学院教授の荒木尚志氏は「着実な実施が大事だ」と要望。上限規制を守れず、経営が困難な医療機関は撤退すべきという意見に触れ「規定を守れなければ制裁(罰則)を受けるが、制裁以上にサポートが大切で、総合的な施策が必要」と強調した。
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