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    インタビュー/〈ILO100周年〉(2)/ユニークな三者構成システム/郷野晶子労働者側理事に聞く

    (2)国際労働機関(ILO)が、国連機関の中でも珍しい政労使の三者構成を取っているのはなぜですか?

     

     ヨーロッパでは既に19世紀末、社会問題を議論する際に三者構成の枠組みが導入されていました。その後、第1次世界大戦で三者の関係がより緊密になりました。戦争に勝つため「国民総戦力」を必要としたためです。

     労働運動も活発化し、組合の要求を無視しにくくなったという事情もあったのではないでしょうか。

     ILOの三者構成の仕組みはうまくできていて、総会でも理事会でも政府2に対し、労働者1、使用者1の割合で構成されています。条約や勧告を採択するには3分の2の賛同が必要です。政労使それぞれ単独では何もできません。三者の間でなんらかの共通項を見つけ出す必要があります。

     政府が2票持っているのは、基本的な責任が政府にあるからです。条約を採択する際には、国内法の整理・整備が必要で、それは政府が責任を持って行うことになっています。

     ILOは条約を各国に守らせるための監視機構を持っています。条約勧告適用専門家委員会や、基準適用委員会、結社の自由委員会です。条約及び勧告の適用状況や、基本的労働組合権侵害などのケースについて審査が行われ、権利侵害を許した政府の責任が問われることになります。

     

    ●国連改革に若干の不安

     

     現在、国連の諸活動を効率化するために、国連改革が行われています。ILOも国連機関の一つとして、他の国連機関との連携が求められています。各国において国連常駐調整官がILOを含めた関係機関のプログラム統合に関する権限を有することになります。今後も三者構成による統治機構と活動、独立した監視機構が維持されるかどうか、私は若干の不安を感じています。

     そうなった場合の影響が心配です。途上国の中には政府が組合を無視したりして、三者構成が事実上機能していない国も少なくありません。それらの国で労働者の権利確保が一層困難になりかねないのです。