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    重大事故防ぐ技術が途絶える/全労働が緊急提言/新人事制度で「技官」減少

     労働基準監督署や職業安定所(ハローワーク)の職員でつくる全労働省労働組合がこのほど、安全衛生業務を担当する専門職「厚生労働技官」の採用・育成を再開するよう求める緊急提言を発表した。10年以上も採用がストップして人数が減少。このままでは専門性維持が困難で、労働災害発生の芽を摘めず、甚大な事故が起きかねないと警鐘を鳴らしている。

     技官の採用停止は、2008年に導入した新人事制度による。労災認定を担当する事務官の採用もやめ、両者の業務を全て労働基準監督官に委ねることにしたのだ。監督官は短期の研修を経て安全衛生の仕事に就くが、本来の監督業務もこなさなければならず、労災防止の専門性を身に付けるのは容易ではないという。

     

    ●育成には10年以上必要

     

     例えば、爆発の危険があるボイラーなどの圧力容器の検査業務。構造・材料や圧力力学、溶接に関する知識に加え、音や振動、破損、腐食などの状態変化を見極める能力が求められる。

     全労働は「一人前になるには10年以上の実務経験が必要。短期研修で重大な責任を押し付けられる監督官の不安は極めて大きい」と懸念する。

     採用停止から10年が経過し、技官のいない監督署が増えてきた。検査で重大事故につながる徴候を見過ごす事態も否定できない。

     全労働は「長期的な専門家育成の観点が欠如した新人事制度は、決定的な欠陥を抱えている」と指摘。全ての監督署に実務経験10年以上の技官を配置することが必要とし、早急に採用・育成を再開するよう求めている。外部の民間労組などにこうした実情を訴え、安全を確保できる行政体制づくりへ協力を呼びかけていくことにしている。