労働時間規制の適用をほぼ全て外す高度プロフェッショナル制度(高プロ制)の4月施行を前に、準備作業が3月、労働政策審議会の二つの会議で行われた。最低賃金との比較方法と、制度の周知に関する問題が取り上げられた。
●健康管理時間の扱い
3月8日、労政審・労働条件分科会最低賃金部会が開かれ、省令案要綱について諮問、答申された。同部会が開かれるのは、最低賃金法の前回大幅改正時から実に11年ぶり。今回は省令策定だけが目的。
テーマは高プロ制が適用される労働者の時給換算方法だ。同制度には労働時間規制が適用されないため、所定労働時間の概念がなく、使用者は労働時間の管理義務を負わない。そのため、厚生労働省は高プロ制に適用される「健康管理時間」で、固定的に支給される年間収入を割る方法を提起した。
年収要件である1075万円を、年104日の休日を除き全て24時間働いたと仮定しても、時給換算額は1700円余り。最賃を大幅に上回るが、同省の賃金課長は、業績などにより変動する「賞与」の割合が極端に高い場合に最賃割れがあり得ると指摘した。「相応の年収で働く人が、そうした働き方に甘んじることはなかなか起こりえないのではないか」との認識を示した。
労働側の富田珠代連合総合労働局長は高プロ制反対の立場をあらためて表明したうえで、「年収ベースで賃金がどのように支払われているかということと、健康管理時間が正しく把握されていることが重要。丁寧で徹底した運用がされるよう厚労省は指導を」と訴えた。
健康管理時間は、新たにつくられた概念。社内外での労働時間をパソコンの起動時間などにより把握するよう定めている。
●偏った説明に苦言
同6日の労働条件分科会では、働き方関連法施行に向けた準備状況について報告され、労使が意見を表明した。
法施行の準備をめぐっては、村上陽子連合総合労働局長が「連合への労働相談では、高プロ制の適用対象にはならない労働者から、『4月から制度を適用すると会社に言われた』との相談が寄せられている」と現場の実情を語った。
厚労省が作成した「働き方改革」に関するリーフレットでは、高プロ制について「専門的な職業の方の自律的で創造的な働き方」と説明している。村上総合局長は「労基法36条(時間外および休日の労働)と37条(割増賃金の支払い義務)が適用されないことについての記載がない。『自律的』『専門的』など価値判断が入ったものになっている」と苦言を呈した。
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