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    医師と国民の命を守れ/ドクターズ・デモンストレーション

     全国医師ユニオンなどでつくる「ドクターズ・デモンストレーション」は3月7日、国会内で緊急集会を開き、約70人が参加した。厚生労働省の「医師の働き方改革に関する検討会」が地域医療の勤務医などの時間外勤務上限年1860時間を提案したことに抗議。医師の命が守られなければ、患者、国民の命も守られないと訴え、医師の増員や財源確保を求めた。

     全国医師ユニオンの植山直人代表は、労働基準法40条で病院などは公衆の不便を避けるため、労働時間の規定を別途定めることを認めているが、同条2項は「労基法に近い基準で労働者の健康や福祉を害さない」ことを求めていると指摘した。「時間外上限年1860時間は明らかに労基法違反。憲法18条では奴隷的拘束の禁止を定めている。省令が労基法や憲法を犯すことは、法治国家として看過できない」と強く批判。このまま省令になれば、厚労省は似たような例外を作り、法律を破壊しかねないと懸念を示した。

     その上で「この省令を使用者が守っていても、過労死遺族が民事訴訟を起こせば安全配慮義務違反などで負けるだろう」と語った。

     「検討会には医療現場の声が反映されていない。問題は絶対的な医師不足だ。経済協力開発機構(OECD)加盟国の平均と比べ12万人も足りない」と述べ、交代制勤務導入など、必要な医師数を検討すべきと強調した。

     日本医労連の森田しのぶ委員長は若手看護師の相次ぐ過労死に触れ、「医療従事者は鉛でできているのではない。医師も看護師も生身の人間。人間らしく働けるルールの確立を」と呼びかけた。

     集会アピールは、患者と医師の健康は表裏一体だと強調し(1)労基法違反にならない省令とすること(2)緊急措置として過労死ライン超過の医師の労働時間を短縮(3)時間外労働の上限を原則月45時間まで引き下げ(4)医師12万人増(5)看護師や医療スタッフの増員と専門職による医師の業務軽減(6)診療報酬の適正な増額や財源と体制の確保――を国に求めた。

     

    〈写真〉「医師の時間外上限案は労基法違反だ」と語る植山代表(3月7日、都内)