東京メトロの子会社メトロコマースの有期契約労働者ら4人が、同じ売店業務に従事する正社員との処遇格差是正を訴えていた裁判の控訴審で、東京高裁は2月20日、退職金などの不支給をは違法と認め、会社側に約220万円の賠償を命じた。
労働契約法20条の裁判で初めて退職金の一部支給を認めたが、本給や賞与の大きな格差を容認した(5ページに一覧表)。原告らは一部是正を評価しつつも「不当判決」と厳しく批判。最高裁へ上告する意向だ。
一審は幹部候補を含む全正社員を、原告ら有期契約労働者の契約社員Bと比較し、早出残業手当を除きほぼ全ての訴えを棄却した。東京高裁は比較対象を原告が主張する売店業務の正社員に限定。手当の性格や目的から(1)早出残業手当(一審と同じ)(2)住宅手当(3)褒賞(4)退職金――の不支給を不合理な格差と認めた。
本給と賞与は、長期雇用を前提とした正社員に対し、「有為な人材」の定着を図ることを目的とした人事施策に一定の合理性があると判断。有期契約の雇用が長期化している実態を認めつつも、格差の大きい箇所については訴えを退けた。
弁護団の滝沢香弁護士は、支払うべき退職金を正社員の4分の1とした算出根拠が不明と指摘。「意義ある一歩だが、比較対象の正社員と同じ年数、同じ労働をしていたと考えると、非常に低い。賞与については一切不合理と認めず、不当な判断だ」と述べ、最高裁での是正を求めた。
〈写真〉判決後、裁判所前で怒りの声を上げる原告ら(2月20日)
「今後も闘い続ける」/原告の後呂さんら
メトロコマース裁判原告の後呂良子さんは、退職金などの不支給を違法とした判決について「5年闘って当たり前のことがやっと認められた」と評価。賞与に関しては「私たちは20年前から手取りで年10万円。正社員の賞与は上がり、格差は10年間で約1200万円になることが裁判の過程で分かった。賞与支給時には(差別のあまり)精神的に嫌な思いをする。人間の尊厳を傷つけるものだ」と語り、今後も闘い続けると述べた。
●瀬沼さんは全て棄却
原告のうち瀬沼京子さんだけが、全ての訴えを棄却された。労契法20条の施行時、定年退職によって契約社員Bから労働時間の短い登録社員になっていたためだという。
「正社員は定年後、契約社員Bで働けるが、私は(会社の意向で契約社員Bになれず)登録社員にならざるを得なかった。これは差別だ。登録社員も有期で同じ業務なのだから(不合理な格差の存在を)認めてほしかった」と悔しさをにじませた。
●「非正規差別」と声明
原告らが加入する全国一般東京東部労働組合は判決を受けて声明を発表した。ほぼ全面棄却された一審に比べ、主張がより多く認められたことを評価。本給や賞与などの差別追認や、退職金の支給額を4分の1にとどめたこと、原告の一人の訴えを全て棄却したことについて強く批判した。
「有為な人材の定着」という理由で本給の格差を容認したことに対し、非正規労働者を「有為ではない」と勝手に決め付けていると指摘。正社員と同じように働いている非正規労働者の労働実態を見ずに切り捨てる差別そのものだとした。
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