外国人労働者の受け入れ拡大を図る改正入管法の施行を前に、日本の移民政策を問うシンポジウムが2月11日、都内で開かれた。主催は上智大学グローバル・コンサーン研究所。ジェンダーや移民などの研究者らが問題点を指摘。仕事や生活に必要な日本語の学習機会が少なく、定住後も貧困に陥りやすい構造があらためて浮き彫りになった。
大阪大学の髙谷幸准教授は、移民を受け入れてきた欧米では、「デニズン(永住市民、定住外国人)」の地方選挙権や社会保障など共生の総合政策が進んだと分析した。日本では、安価な労働力を求める経済界と移民反対派への配慮から、外国人技能実習制度が主流となり、デニズンの視点が欠けているという。「政府の方針は非熟練労働者の定住化の拒否。定住化させずに生活保障などの社会的権利を制限し、政治参加もさせていない」と述べた。
改正入管法では、入国管理局が出入国在留管理庁に変わり、日本社会への受け入れ支援よりも在留管理に重きが置かれたことを注視。「予算を見ればわかる。日本語教育への約3億円に対し、不法滞在者対策は約156億円だ」と述べ、共生政策とのアンバランスさを批判した。
ジェンダー問題について上智大学の稲葉奈々子教授が解説。技能実習制度では、介護の9割、飲食サービスや食品製造の7割を女性が占め、労働生産性の低い業種で賃金も安いという。一方、男性は建設や自動車整備など重労働に就く。「日本人よりもジェンダー間分業が強い。母国での募集広告には、男性の時給は1250円からとなっていて昇給もあるが、女性は950円だけ。日本国内の広告なら問題になるのでは」と懸念を示した。
女性が条件のよい仕事にステップアップできない理由として、日本語の学習機会がないことと、職業訓練の不十分さを挙げた。「日本語の読み書きができなければ排除される。外国人対象の職業訓練もあるが、大半は介護職だ。女性の外国人にそれ以外の選択肢がないのは問題」と介護職偏重の解消を求めた。
生活保護を受給している外国籍女性では母子世帯が最も多い。日本の賃金と社会保障の体系が女性の労働を家計補助と位置づけているため、離婚後に単身で自立した生活を営むのは困難だと指摘。「日本人女性よりも公的支援を必要としている。彼女たちのセーフティーネットを」と呼びかけた。
〈写真〉「男性1250円~、女性950円」の技能実習生募集広告を説明する稲葉教授(2月11日、都内で)
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