鉄鋼、造船重機、非鉄金属の労組でつくる基幹労連は2月6日、都内で中央委員会を開き、65歳定年制度導入などを柱とする春季取り組み方針を決めた。今年賃上げ交渉を行う組合については、昨年決めた3500円以上を基本に要求することになる。
方針は、65歳に定年を延長する新たな制度導入を求める。昨年スタートした取り組みで、厚生年金の報酬比例部分の支給開始が65歳になる2021年度の60歳到達者から適用させたい考えだ。先行組合が制度の具体化を要求するとともに、全ての組合で労使話し合いの場の設置を求めていく。
基幹労連によると、労使間で制度についての詰めた議論には至っていないが、退職金や賃金、定年延長後もしばらく併存する定年後再雇用者との均等・均衡処遇など労務費関連の財源が課題になるとみられる。新制度を導入する際の産別の取り組み姿勢は「現役世代の(賃金の)財源は使わせない」。新たな原資増と生産性向上を視野に置く。
神田健一委員長は事前の方針説明会で、労務費の財源問題を示した上で「経営側が心配しているのは3交代などハードな勤務ができるのか、嫌がる人が出てこないか、ということ。組合としてもしっかり課題を提起していく」と説明した。
●高プロから働く者守れ
基幹労連の春の賃金交渉の特徴は2年サイクルで行うこと。今年は産別全体で賃上げに取り組む年ではないが、造船重機と非鉄は賃上げ交渉を行う。要求は昨年決めた「3500円以上」が基本。鉄鋼系は既に19年度分として1500円のベアを獲得済みだ。
働き方関連法への対応では、神田委員長が4月に施行される高度プロフェショナル制度に言及し「過労死防止に逆行する。反対の立場に変わりはないが、施行される以上、働く者を守る立場から他産別、連合と連携し対処していかければならない」と組合の役割発揮を求めた。
●業種のまとまりを軸に
討論では、「65歳現役社会へ労使検討委員会の設置を求め積極的に運動を展開していく。電力料金など固定費増を理由にかたくなな姿勢が予想される」(普通鋼部会)との意見や、「18年の要求策定時と比べ情勢の大きな変化はないと判断し3500円を要求する。米中貿易摩擦や日韓関係の悪化など先行き不透明感は増しており、従前にない厳しい交渉が予想される。生産性向上、品質確保への組合員の努力に応え、賃金改善の意義を経営側に認識させるべく最大限の努力をする」(川崎重工労組)との決意が述べられた。
弥久末顕事務局長は答弁で「継続した『人への投資』を定着させ優秀な人材を確保しなければ、ものづくり産業の将来に禍根を残す。部門・部会のまとまりを軸にした全力の取り組みを」と述べた。
電力料金の高騰が企業収益を圧迫しているとの複数の意見に触れ「原子力発電所の再稼働が9基にとどまっている現状のままでは、低廉で安定した電力供給ができるとは言えない。産業用電力料金は震災前と比べ38%上昇し、化石燃料の輸入で15・5兆円の国富が流出した。産業・企業の永続的基盤を維持するためにも、安全が確認された原発を早期に再稼働させ、低廉で安定的な電力供給を実現すべきだ」と語った。
〈写真〉中央委員会後にはJAM出身の次期参院選組織内候補を「JAM出身・基幹労連代表候補」として必勝をめざす集会が開かれた(2月6日、都内)
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