日立やパナソニックなど電機・電子関連の労組でつくる電機連合は1月24、25の両日、横浜市内で中央委員会を開き、開発・設計職について3千円以上の水準改善(ベア)を要求する方針を決めた。方針論議では、賃金水準重視へのシフトを強める連合の春闘方針の変化について懸念する意見や、長時間労働是正への決意が示された。
ベア春闘は6年目。これまで大手の賃金改善額の累計は9千円となる。
方針は大手各社の業績にばらつきがあるものの、内部留保は史上最高で、財務状況は好調と分析。実質賃金が伸び悩む中、個人消費の拡大や、人材の確保・定着のため、継続的な人への投資が必要としている。
野中孝泰委員長は63年目となる春闘について、日本経済の好循環実現という社会の要請に応えて賃上げを行う「社会的責任型闘争」の性格が強まっていると指摘。電機連合の賃金水準を意識した格差是正の取り組みと統一闘争が「相場形成と波及効果という点で社会的な役割と責任を果たすことにつながっている。統一闘争を支える労使の信頼関係と真摯(しんし)な論議に感謝する」と語った。
注目されるのは、18歳見合い企業内最低賃金と高卒初任給を4千円引き上げ、それぞれ16万6千円、16万7500円以上にするよう求めること。人材確保、非正規労働者の底支え、特定最賃の引き上げを訴える。開発・設計職を超える要求は初めてだ。
●統一闘争への影響懸念
連合が賃金の上げ幅から賃金水準重視に移行することの統一闘争への影響について、懸念する意見が出された。
日立の代議員は総論賛成としつつ、「交渉の方法論として可能か、疑問を禁じ得ない。公正競争の下、産業別、職種別の横断的な水準がある程度労使間で共有され、同一価値労働同一賃金が進んでいれば可能だと思う。しかし、その環境が不十分で、産別による中小労組への手厚いケアがないまま、水準だけを取り出して個別労使に交渉を投げては、個別労組の交渉力がそのまま結果に反映される。社会横断的相場形成や、将来の交渉のあり方に影響が出るのは自明だ」。
メイテックは、大手の傘下にない中堅・中小労組を代表して発言。賃金水準を意識した格差改善と、上げ幅による統一闘争の両立が必要としたうえで、上げ幅の統一闘争が切り離され、絶対額の取り組みに偏れば「バラバラな様相を呈してしまう。統一闘争強化の私たちの立場からは憂慮すべき事態だ」と慎重な対応を求めた。
一方、パナソニックは発言の中で「単組の主体性発揮」を数回強調、「産業、社会、雇用が変化する中、闘争のあり方を変えていかなければならない。『統一』と『一律』の再整理が必要。現実的な検討が必要」と述べるなど意見の違いも。
神保政史書記長は「上げ幅と水準は切り離せるものではない。セットで取り組んでいくことに変わりはない」と答弁。実質賃金と労働分配率が低下する中、実質生活向上のための労働条件改善と統一闘争が必要と強調した。パナ労連の提案には「波及効果の最大化と底上げ、全体で取り組める水準が重要。統一闘争を強化する前提で中長期的に検討していくべき」と述べた。
●過労死を起こすな
電機連合は、産別平均で組合員の総実労働時間が2千時間を超える。三菱電機では裁量労働制での過労死や、労災が社会問題になった。論議では、長時間労働是正の取り組み強化を求める発言も出され、野中委員長は「過労死は絶対にあってはならない」と二度、三度と力を込めた。まずは職場での労働時間管理が必要だとし、上司によるマネジメント、仕事の配分の調整がきちんとできる職場の確立へ努力を求めた。
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