全国医師ユニオンの植山直人代表は、医師の残業を年間で約2千時間まで許容するという厚生労働省事務局案について、医療事故のリスクが高まるなど11の問題点を指摘している。
厚労省は約2千時間もの上限を認める理由として、現実に1920時間を超えて働く医師が1割程度いることを挙げている。植山代表は、本人の意思に反して働かされているケースや、「仕事中毒」となっている可能性を指摘。長時間残業が可能という根拠にするのではなく、業務内容の早急な改善やドクターストップが求められる事態だという。
同ユニオンによる勤務医労働実態調査2017によれば、「健康不安」と「病気がち」の合計は40%。医師の健康状態には既に赤信号がともっている。
影響は医師の健康にとどまらない。「過労死ラインを越えても大丈夫という誤ったメッセージを与える恐れ」や、長時間労働がまん延する診療科での医師不足が一層深刻化することも懸念している。
患者への影響も無視できない。日本外科学会の調査では、医療事故・ヒヤリハット事象の原因として、81%が「過労・多忙」を挙げている。人間の注意力は起床後16時間を過ぎると急激に低下するとの知見も紹介し「患者は、長時間労働によって医療事故を起こすリスクを抱えた医師による治療を望んでいない」と訴える。
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