労働時間の規制を外す高度プロフェッショナル制度(高プロ制)。今年4月から導入が可能となるが、労働組合は「職場に導入させない」方針で一致している。心配されるのは、少数派労組や組合のない職場だ。昨年12月には、運用基準などを定めた省令と指針が明らかになった。歯止めになり得る規定を使って不当な運用をどう防ぐかが課題になる。
●業務を絞り込んだが…
省令・指針では、高プロ制の対象業務を金融開発、ディーリング(資産運用)、アナリスト、コンサルタント、研究開発の5業務とした。対象範囲を無限定に広げないため、指針で「対象になる業務」と「対象にならない業務」を例示している(次ページに表)。
例えば「もっぱら時間配分を顧客の都合に合わせざるを得ない相談業務」「金融機関の窓口業務」「作業工程など日々のスケジュールが定められ、それに従わざるを得ない研究」は対象外。業務遂行に当たって本人の裁量の余地が少ないものを除外した。
とはいえ、研究開発では「新たに価値を生み出すもの」は対象で、「価値を生み出さないもの」は対象外との記述もあり、その線引きはあいまいだ。
●1075万円は下限
年収要件の「1075万円以上」の詳細については、「高度な専門職にしては低過ぎる」との指摘を踏まえ、あくまで下限額として了承された。職場ごとに高い要件を設定することは可能との判断だ。労働政策審議会労働条件分科会は同審議会への報告に当たり「年収要件はパート労働者の賃金を除外した額とすべき」との労働側意見も付記した。
このほか、歯止めとして(1)導入には労使委員会で5分の4以上の議決が必要(2)本人が同意しなかったり同意を撤回したりすることへの不利益扱いの禁止(3)高プロ制の適用前の賃金から減額しないこと――などを定めている。
1年以上の雇用契約と無期契約の場合は、1年ごとに本人同意が必要というのが原則。一方、1カ月~1年未満の有期契約労働者にも高プロ制を適用できる。新入社員も除外されておらず、どう扱うかは企業労使に委ねられている。
改正法では、対象者に健康確保措置が設けられている。四つから一つを選べばいいというもので、「勤務間インターバル制度の導入」など長時間労働防止が期待される措置もあるが、「臨時の健康診断」も選択肢の一つ。どれにするかは労使の判断次第だ。
●労使委員会が鍵?
導入の際に重要な役割を担うのが労使委員会だ。過半数労組がある場合は、労働側委員の指名に関与できるが、過半数労組がない場合は使用者側の意向を受けた労働側委員が指名されかねない。公正な指名・選出が担保されるよう監視が必要になる。
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