東京の特別区(23区)の労使は、月例給を平均9671円引き下げる人事委員会勧告を実施しないことで合意し、11月に確定闘争を終えている。特別区職員労働組合連合会(特区連)の吉川貴夫委員長はこのほど、今年の取り組みを振り返り「怒りの抗議署名や集会など歴史に残る規模の闘争で、史上最悪の勧告を見送らせることができた」と総括した。
東京23区は、基本的な労働条件を統一して定めており、勧告後の賃金確定は区長会と特区連の交渉で決まる仕組みだ。
今回の大幅マイナス勧告は行政職の係員・主任クラスなど下位の級ほど削減率が大きく、最高で月1万5千円もの減額になるはずだった。
特区連は「物価が上がり、民間賃金も上昇。国の人事院勧告も655円のプラスなのに、なぜ特別区で大幅マイナスなのか納得できない」と批判。職員には怒りが広がり、勧告を実施させない取り組みを進めたという。
●人事制度改正が影響
公務員賃金の勧告は民間と比べて、その差額を是正するのが目的。今回は公務の方が突出して高い数値が出たため、大幅に賃金を削る勧告となった。吉川委員長は要因について「昨年実施した人事制度改正の影響が大きい。賃金はそのままで役職段階が下がった職員が大量に発生したため」と説明する。
例えば、主任主事だった人たちが制度改正により、暫定的にワンランク下の係員に格付けされたケース。その人たちは賃金が維持されたまま下位ランクに移行したため、新係員の平均賃金が自動的に上昇し、その高い賃金を民間の係員クラスと比較したことで、公務の方が高く出てしまったのだという。
個人の賃金実態は変わっていないのに、職員は大幅賃下げをいきなり突き付けられたことになる。
●怒りの職場集会も
勧告を受け、職場ではかつてない規模での取り組みが進められたという。
人事委に対しては、管理職や非組合員を含む全職員数に迫る約5万5千筆の抗議署名を提出。各区でも集会や学習会を重ね、ヤマ場の総決起集会(11月19日)には、過去12年間で最大の1290人が参加した。
最終局面の11月21日には区長会が「本来なら勧告尊重が基本だが、熟慮を重ねた結果」として、勧告を実施しない考えを示した。加えて、不適切な結果をもたらした公民比較方式を改善するよう、人事委に伝えることも約束し、同日妥結に至った。
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