全国フェミニスト議員連盟が都内で開いた研修会(11月12日)に、神奈川県小田原市の職員が講師として招かれ、市の生活保護行政を立て直した経験について語った。
同市では2017年1月、生活保護を担当する職員が「保護なめんな」という、利用者を威圧するようなジャンパーを着用していたことが問題になった。市は謝罪するとともに、保護行政の改善を進めてきた。
●組織全体の問題として
講演したのは、同市企画部の加藤和永氏と、福祉健康部の塚田崇氏。
加藤氏は事件発覚後、市長判断によって迅速に事件の総括が行われたことを報告した。井手英策慶応義塾大学教授らからなる第三者委員会の提言もあり、今年4月から全庁的に新体制が敷かれたという。
「市長が職員の減給処分などではなく、『組織全体の問題だ』という姿勢を示したことも大きかった」
市は、生活支援課の職員を増員し、90を超えていたケースワーカー1人当たりの担当世帯数を80世帯にまで減らし、社会福祉士の有資格者も増やした。
●多様な「伴走」の形
塚田氏は生活困窮者について、以前は「生活保護につなげて終わり」という意識が職員の側にあったが、事件後は利用者の自立支援をめざす方向にかじを切ったと語った。
「経済的自立だけを重要視せず、地元の農家で有償ボランティアをしてもらうという方法もある。(多様な支援手段を用意することで)他課との連携が可能となり、生活支援課の孤立を防げる。組織として利用者に伴走する形ができた」
事件発覚から約2年。ジャンパー着用は当時、全国から批判を浴びた。しかし、ジャンパー着用には「よくやった」という声も多かったという。生活保護利用者を敵視する感情は、多くの自治体でも見られ、小田原市の経験をどう生かすかが問われている。
〈写真〉報告する小田原市職員の加藤和永氏
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