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    「団体協約で安全、処遇守った」/五輪施設建設で英・豪労組が報告

     東京五輪パラリンピックの競技施設の建設で、建設労働者の「尊厳と人権」をいかに守るか――。英国と豪州の建設労組メンバーがこのほど来日し、関係者との協議や団体協約によって安全や労働条件を守った取り組みが報告された。建設首都圏共闘会議などでつくる実行委員全主催のシンポジウムでのひとこま。

     ロンドン五輪(2012年)では07年、競技施設の建設に関し、運営主体の公団と労組が「合意に関する覚書」を交わした。五輪施設の建設労働者は直接雇用され、関連する業界との団体協約により労働条件が守られるという内容。

     建設労働者が加盟しているUNITEのゲイル・カートメイル書記次長によると、英国では建設労働者の約半数が請負や偽装的一人親方など非雇用の契約で働く。「覚書がなければ、公正な競争条件と労働条件を確保する、実効あるルールにはできなかった」と話す。

     同五輪施設建設での死亡事故はゼロ。事故率は他の同様の建設プロジェクトより66%も低かったという。

     シドニー五輪(2000年)でも労組が役割を発揮した。施設建設開始当時、中央政府は労組に敵対的だったが、開催地の州と自治体は労働党が与党だったため、労組の関与が保障され、賃金と労働条件は団体協約によって守られたと、アンドリュー・サザーランドCFMEU建設一般部門書記次長。労使・組織委員会の協議が行われ、工期通りで予算超過もなく、品質の基準も守られたという。

     同書記次長は「労働者がいなければ大会は成立しない。国際労働機関(ILO)の条約に示された労働者の安全と(団体交渉権などの)中核的権利に妥協はない」と語った。

     

    ●現場での交渉機構を

     

     日本では、新国立競技場建設で昨年、施工管理を担当していた23歳の若手社員の過労自死が判明した。大成建設が元請けの現場では当時、新規入場者の認証や安全教育は朝6時半に行われていた。建設従事者の多くは近隣県から自動車に乗り合わせて現場入りする。1人でも新規入場者がいれば全員が朝6時には到着しなければならない。

     過労自死を受け、東京土建は就労環境改善の宣伝を開始。その後間もなくして、新規入場者教育開始時刻の繰り下げや、元請けによる休憩所での給水管理、夜8時以降の消灯などの改善が確認されたという。

     松本久人副委員長は「作業員がモノを言える環境と現場での交渉機構づくりが必要だ」と語った。

     

    〈写真〉UNITEのメンバーはロンドン五輪開会式で建設に従事した労働者が入場行進したことを報告。日本でも建設労組が求めている(11月4日)