連合は2019年春季闘争以降、あるべき賃金水準への到達をめざす要求・交渉方式に軸足を移す。賃金の上げ幅を指標とする取り組みでは、企業規模や雇用形態間の格差が縮まらないことが理由。構成組織には、目標水準を定め追求する役割を課す。
一方、「上げ幅」の要求基準は、11月1日の討論集会で初めて数字が示された。例年より約1週間遅い。同日提起されたのは前年同様、定期昇給相当分2%と賃上げ分2%程度の計4%程度。中小労組については1万500円を設定した。非正規労働者の初職の基準は時給1050円とした。
闘争方針案は11月15日の中央執行委員会に示され、30日の中央委員会で確定する。
●上げ幅プラス水準も
基本構想は、ベア春闘再開5年が過ぎても依然として格差が縮小していないと指摘し、「春闘の再構築」を打ち出した。組織内外への波及効果を高めるとともに、「中小組合や非正規労働者の賃金を『働きの価値に見合った水準』へ引き上げていくため、賃金の上げ幅のみならず賃金水準を追及する闘争の強化を図る」とした。
賃上げへの基本的態度について、連合本部は上げ幅と、目標水準を決める際の指標を設定するとし、構成組織は「月例賃金にこだわり、名目賃金の到達目標の実現と最低到達水準の確保、すなわち賃金水準の追求に取り組む」とした。
神津里季生会長は「実現には賃金実態把握の強化が必要。『働きの価値』を何を基準とするのかも検討を深める。19闘争を足がかりとし、乗り越えられなかった壁を突き破りたい」と狙いを語った。
期待と不安入り交じる/連合春闘討論集会
2019春闘基本構想について話し合った、連合の討論集会。今後2年がかりで水準重視に軸足を移していくとの提起に、賛同する声と不安を示す声が入り交じった。
製造・流通・サービスなど中小労組を多く抱えるUAゼンセンは、水準重視に大賛成としつつ、水準と上げ幅をセットで示したことを評価。連合が賃上げ要求の数字を示すことは「闘争を盛り上げるうえで大事なこと」と念を押した。
個別賃金要求を近年重視しているJAMも「中小を方針の真ん中に置いたことに力強く賛同したい」と歓迎。その上で、連合700万組織にふさわしい数の賃金データを集めることが大事だと強調した。
地方連合会からは「水準重視に賛同だ。(上げ幅と賃金水準の)どれを中心に社会に伝えればいいか」(石川)、「たとえば運輸業は事務職と運転職で水準に大きな差がある。正しい水準を提示できるのか」(北海道)、「賃金データをいかに増やすか」(長野)、「『働きの価値』の定義は何か」(東京)などの質問や意見が相次いだ。
一方、不安視する声も。自治労・全国一般は「たたかいが困難にならないか。地場中小企業の多くは定期昇給がなく賃金カーブも不明確。あるべき水準は非常に立てづらい」と実情を語った。賃金水準を扱う交渉は「(近隣の)この会社よりうちは賃金が高い。だから十分だ」と賃上げ抑制の論理に使われる恐れがあることや、賃金制度の整備を求めると、恣意(しい)的な評価制度が逆提案されかねないとの懸念を示した。
全国ユニオンも「既に水準に到達している職場は賃上げ抑制にならないか。大手が賃上げしないと中小の賃上げは難しい」と述べ、丁寧な議論を求めた。
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