労働時間規制を外す高度プロフェッショナル制度(高プロ制)についての省令などを議論する労働政策審議会(厚生労働相の諮問機関)の労働条件分科会が10月15日に開かれた。対象者の年収要件や適用業務について議論した。年収要件とされる1075万円に一時金や交通費を含めるのかをめぐり、審議が紛糾した。
●1075万円は低すぎ
労働側委員の柴田謙司情報労連書記長は、1075万円の数値(毎月勤労統計)にパート労働者が含まれていることを問題視した。「高プロ制の対象者は真に使用者との交渉力があり、正社員のなかでも特に会社から引き留めがあるような労働者だと認識している。パート労働者を除外して計算すると、年収は1600万円以上になるのではないか」と述べた。
他の労働側委員からも「1075万円は低すぎる」という声が相次いだ。
国会質疑で厚労省は「成果で変動せず、確実に支払われるものは年収要件に該当する」として、通勤手当などは年収に含まれると答弁していた。労働側委員は「一時金や退職金は含まれるのか」と質問。厚労省事務局は一時金などの扱いについては明確にしなかった。1075万円の水準を見直すことには消極的な見解を示した。
働き方改革関連法の付帯決議は、高プロ制の年収要件について「真に使用者に対して強い交渉力のある高度な専門職労働者にふさわしい処遇が保障される水準」を求め、具体的には労働政策審議会でていねいに議論することとしたが、厚労省事務局は踏み込もうとはしなかった。
使用者側委員の輪島忍経団連労働法制本部長は「年収1075万円は自然な考え方」と述べ、審議の進め方については「高プロ制をどのようにポジティブに認めていけるのか、認識を共有していくことが必要」と注文を付けた。
●新入社員も対象か?
高プロ制の対象者に新入社員を含めるかどうかについても議論が交わされた。UAゼンセンの八野正一副会長は「高度な専門的知識と高い交渉力があるというのが対象者の条件なら、ある程度の経験値がある人を想定する必要がある」と述べた。その上で「条文の要件はあいまいであり、労政審できちんと定めていく必要がある。本人の同意をどういうふうに決めていくのかが重要だ」と話した。
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