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    沖縄レポート/ボールは「ヤマト」の側に/玉城新知事の誕生で

     沖縄県知事選挙は、翁長雄志前知事が率いた「オール沖縄」が推し、国政野党が支援した玉城デニー氏が、自民・公明・維新・希望が支援した佐喜真淳氏に8万174票の大差をつけて当選した。

     

    ●「誇りある豊かさ」

     

     当初は佐喜真氏の優勢が予想されていた。翁長氏が保革の枠を越えて構築した「オール沖縄」によって圧勝した、前回知事選と状況が大きく変わっていたからだ。昨年から今年にかけて宜野湾市長選、名護市長選など県内重要選挙で敗北が続いたことも含め、翁長知事頼みの「オール沖縄」は崩壊寸前に見えていた。知事急逝後に候補者をなかなか決定できなかったことも、そのことを如実に示していた。

     一方、政権側は前回自主投票だった公明党を推薦に組み入れ、前回知事選で7万票を得た下地幹郎氏を擁する維新とも手を結んだ。これらの基礎票を固め、国会議員や業界大物、創価学会員を大量に送り込んで水面下でローラー作戦を展開する「ステルス作戦」による「勝利の方程式」は揺るがないかに見えた。しかし、政権の「勝利の方程式」は機能せず、沖縄県民は新基地建設反対、翁長県政の継承を選んだ。

     今回の選挙では多くの県民が強い危機感を抱いていた。行ったことのない選挙事務所に通い、街頭演説を追い掛け、知人に電話をした。ある医師は「これまでやったことはなかったが、産業医をしている企業にお願いして朝礼で話をさせてもらった」と語った。

     選挙戦序盤での世論調査や(期日前投票の)出口調査では、回答を拒否する人も多く、その中の佐喜真支持の割合を読み切れず、メディアは接戦と報じるしかなかった。民意を無視する権力に対して、諦め従うことで豊かさを得るのか、自己決定権を主張して「誇りある豊かさ」を目指すのか、という選択で、県民は8万票差という形で答えを出したのである。

     

    ●いばらの道は続くが…

     

     10月9日に翁長前知事の県民葬が行われた。菅官房長官が参列し、安倍首相の弔辞を代読した。聴衆は、前半は聞き入っていたが、「沖縄県に大きな負担を担っていただいている現状は、到底是認できるものではない。何としても変え、政府としてもできることは全て行う」と述べたところで「うそつけ」「帰れ」のヤジが飛び騒然となった。怒号に追われるように沖縄を後にした菅氏は何を感じただろうか。

     翁長前知事は就任後4カ月間、政府首脳に面談を拒絶されたが、玉城デニー知事は12日に首相と面会した。ボールは政権に投げられている。政権は世論をにらみながら新知事との距離を測っているのだろう。

     玉城新知事も、彼を選んだ沖縄県民にとっても、いばらの道が続く。そのことを日本全国の自治体、有権者がどう見て、どう動くのか。その意味でもボールは日本本土=ヤマトの側にある。

     

    〈写真〉沖縄県庁に初登庁し、職員や県民に歓迎される玉城デニー新知事(10月4日)