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    外国人労働者に人権保障を/日弁連人権擁護大会

     安倍政権は6月、「骨太の方針」で外国人労働者受け入れの新制度案を示した。一定の技能と日本語能力を持った労働者が対象で、在留期間は最長5年。家族の帯同は認めず、「移民ではない」とし、人権保障の観点から批判の声が上がっている。日本弁護士連合会は10月4、5の両日、青森県内で人権擁護大会を開き、外国人労働者の受け入れ問題をテーマにシンポジウムを行った。現在の外国人技能実習制度を廃止した上で、人権保障と共生社会の構築が必要とアピールした。

     

    ●労働組合の役割大きく

     

     宮島喬お茶の水女子大学名誉教授は基調講演で、欧州の外国人労働者の受け入れの歴史と日本の現状を比較した。ドイツでは1960年代、外国人労働者の受け入れに際し、二国間協定で賃金や社会保険などを決める制度を導入。労働者の定着を避け、2年間のビザで帰国させる短期ローテーション政策だったが、企業側の要望を受けて70年代には長期のビザが発行されるようになった。低賃金労働に反対していた労働組合はドイツ人と同一の待遇、賃金を強く要求。組合加入を義務付けた。

     宮島教授は「労働組合が外国人労働者の社会教育、生活支援をしたといわれる。解雇事件について会社と交渉し、復職を実現させるなど、組合の果たした役割は大きい」と指摘した。

     日本が取るべき方策として「まずフロントドア(正面玄関)から労働者の受け入れを進めること。技能実習生ではなく、自由な労働者として在留更新など権利を認めるべき」とし、二国間協定が必要と述べた。

     

    ●技能実習制度の廃止を

     

     パネル討論で自民党外国人労働者等特別委員会委員長の木村義雄参議院議員は、技能実習制度が日本の技術移転による国際貢献を主旨としながら、事実上の労働力受け入れ制度になっている問題を指摘。その上で、新たな在留資格制度について、「少子化、労働力不足の今こそ、労働力として正面から入っていただくべき」と政府の新制度案に積極的な姿勢を見せた。

     新制度案では3年の技能実習経験がある労働者について能力試験を免除する。現在5年の実習終了後に新制度の在留資格を得られれば、最長10年まで在留が可能だ。入国管理局担当の佐々木聖子・法務省大臣官房審議官は「新制度は人手不足への早急対応であり、実習制度の後継制度ではない」と強調した。

     立憲民主党の石橋通宏参議院議員は「(外国人労働者の受け入れは)完全に公的な制度にすべきで、二国間条約が必須」と述べ、実習制度で問題になっている悪質なブローカーの排除を求めた。新制度案について「家族帯同の禁止は極めて問題。最長10年も家族と離れ離れでいいのか」と問題視した。

     国際的な人材獲得競争の視点からも、外国人労働者の受け入れは重要な課題だという。経団連の井上隆常務理事は、新制度案で示された在留期間5年上限に触れ「中期的な人材育成も視野に、教育投資をしてよりよい人材になってほしいと経営者が考えるのは当然」と述べ、在留期間終了後の実質的な延長を促した。

     連合の村上陽子総合労働事務局長は、新制度が安価な労働者の受け入れになるのではと懸念を示した。

     全統一労働組合の鳥井一平特別中央執行委員は、実習制度によってブローカーが登場し、実習生は費用分の元が取れるまで働かなくてはならず、隷属度が高まったと分析。「奴隷労働ではなく、民主主義の労使対等の原則に基づいた労働者の移動を」と訴えた。