文部科学省の中央教育審議会「学校における働き方改革特別部会」が9月27日に開かれた。教員の勤務時間上限に関し、月45時間・年360時間以内などのガイドライン(指針)案の内容を確認し、具体的に長時間勤務をどう抑制するかについて議論した。
各委員の発言が続く中、議事進行役の小川正人部会長(放送大学教授)が1年単位の変形制導入について議論の口火を切った。1年単位の変形制は、自民党の教育再生実行本部が提言した経緯がある。
●時間外業務の対象拡大へ
指針案は、働き方改革関連法で規定された「月45時間・年360時間以内」の原則を時間外労働の上限の目安とした。対象となるのは、「給特法」が適用される公立の義務教育学校などの教員だ。
給特法は、生徒の実習や災害対応、学校行事など特定の業務以外は時間外勤務を認めず、時間外手当の代わりに月4%の調整給を支給する内容。指針案では、授業準備なども勤務時間として認める方向だ。追加する対象業務は、職務との関係性や在校中の活動などを考慮して整理するという。
学校マネジメントコンサルタントの妹尾昌俊委員は「調整給はビートルズが来日した1966年から変わらず、実態と合っていない。4%は低すぎる。(対象業務を広げる場合)これを是とするかは議論が必要」と念を押した。時間外上限の実現には部活動や行事の大幅削減が求められると指摘。「(削減しても)限界があるというなら、教員やスタッフの数を増やすべき。財源の問題はあるが、本気でこの目標を立てるならば考えなくてはならない」と検討を促した。
●委員会からは疑問も
議論の中で小川正人部会長が突然、「不規則発言」と断りながら、論点の一つである1年単位の変形労働時間制について問題提起した。同部会長は3月、日本教育情報化振興会の講演で、変形労働時間制を検討したいと明言していた。
同部会長は「(本来の)労働時間である7時間45分内に収まるよう業務削減をすぐにできる状況ではないのが現実」と発言。今のまま導入するのはいけないと前置きした上で「繁忙期と閑散期のメリハリをつけ、1年単位の変形労働時間制の可能性を探ることは選択肢としてあってもいいと思う」と述べた。
厚労省の平成29年就労条件総合調査を参考に、「変形労働時間制を導入している企業は57・5%。1年単位は33・8%で想像以上に多く、決してレアケースではない」と強調。変形労働時間制の方が時間外上限が短いことに触れ、「膨大な業務量を減らし、長時間勤務を減らす目標には厳しいルールを導入し、てこにする。そういう考え方もいいのではないか」と意見した。
同部会長から労働法の専門家として見解を求められた筑波大学教授の川田琢之委員は、「給特法」の下で教員には時間外手当が支給されていない点に留意すべきと指摘。「民間企業のように割増賃金で時間外労働に歯止めをかける機能が発揮されにくく、変形労働時間制を導入しても何も変わらない可能性がある」と答えた。
連合事務局長の相原康伸委員は「安全衛生の面からも疲労や睡眠は1日ごとに回復するのが重要。『年間を通じて疲れが取れた』というのは本当か」と批判した。民間企業の場合、商戦に合わせた生産時期の調整対応が利益につながるため、変形労働時間制を導入する目的があると指摘。学校職場への導入目的を明らかにすることを求めた。
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