世界60カ国以上の俳優団体・労組でつくる国際俳優連合(FIA)と、日本俳優連合(西田敏行理事長)は9月27日、都内でシンポジウムを開き、俳優の地位向上や、セクハラ根絶など芸能界の健全化について話し合った。特にインターネット動画配信など作品の二次利用について、日本では俳優の著作権がなおざりにされている現状が報告された。海外の代表も同様の問題に直面しているとし「われわれは団結して要求しなければならない」と繰り返し述べ、国際連帯を訴えた。
俳優でFIA会長のフェーン・ダウニー氏は、日本の映画監督の小津安二郎、黒沢明、是枝裕和、宮崎駿らの業績を称賛したうえで、映画やドラマの二次利用の対価が俳優に保障されていない現状を問題視。著作権など芸術家の権利保護などを定めた「ユネスコ芸術家の地位に関する勧告(1980年)」の実施が重要と語った。
日俳連からは、ポール・ニューマンやアル・パチーノらの日本語吹きかえで知られる声優の羽佐間道夫副理事長が、日本では俳優の労働者性が認められず、労災補償の対象外に置かれがちであることや、若い女性俳優がセクハラ被害に遭う問題を報告。映画作品の二次利用については著作権法の改正を求めていく考えを示した。
俳優の内田勝正副理事長は「映画が放送され、ネット配信され、ビデオレンタルされても俳優には何の権利もない。著作権法上、録音、録画の許諾をした場合は権利が消滅するとあるからだ。撮影の際に録画の許諾についての話などしたら『東京へ帰れ』と言われ、二度と現場に戻れなくなるだろう。『水戸黄門』に年間30~40本、20年ほど出演したが、二次利用料は支払われたことがない」と語った。権利放棄を余儀なくされる事態は(映画会社やテレビ局側の)優越的地位の乱用だと厳しく批判した。
海外の加盟団体代表が、俳優の報酬確保や団体交渉の実践例を報告。
ネットフリックスなど動画配信サイトによる作品の二次利用について、全米テレビ・ラジオ・アーティスト連合(SAGA‐AFTRA)のデビッド・ホワイト氏は、国際的大企業に対抗するには「団結して要求しなければならない」と繰り返し強調した。
「私たちはパワーを持っている。彼らは優良なアクター(俳優)を必要としている。団結して要求すればきっと改善する」と述べ、盛んな拍手を浴びていた。
〈写真〉「文化立国」をめざすなら、まず実演家の権利保障と地位向上が必要と訴えた(9月27日、都内)
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