建設資材に含まれていた石綿(アスベスト)が有害であることを知りながら国や建材製造企業が必要な規制や警告表示をしなかったとして、元建設労働者や遺族らが賠償を求めている「建設アスベスト訴訟」。大阪高裁は9月20日、国と建材製造企業8社に対し総額約3億3900万円の賠償を命じる判決を示した。同種の裁判で国を断罪する司法判断は、8月末の京都1陣訴訟大阪高裁判決に続き、これで10度連続。一人親方などに救済範囲を広げ、責任の割合も拡大した。
判決は、1975年には国は石綿含有建材の危険性を認識できたと指摘。防護マスク着用や警告表示の義務付けを行わなかったことを違法と断じた。さらに、91年時点で石綿含有建材の製造を禁止しなかったことについても、必要な規制権限を行使しなかったとして、高裁の判断では初めて違法と認定した。
一審の大阪地裁判決は、建材製造企業の責任を認めず、一人親方については一部のみを救済の対象としていた。二審は、ニチアスなど企業の責任を認めるとともに、一人親方を国家賠償法で保護されるとし、違法とされる時期もさかのぼるなど、救済範囲を広げた。国の責任割合を同種の訴訟では初めて3分の1から2分の1に引き上げ、賠償額を総額で3倍に増額させた。
先行する裁判では、国、企業が最高裁に上告。国は敗訴を重ねながらも、解決への協議の呼びかけに背を向け続けている。首都圏建設アスベスト訴訟弁護団の佃俊彦弁護士は「国は敗訴するたびに負け方がひどくなっている。これ以上裁判を続けても『国に責任がない』という司法判断はあり得ない」と指摘。一刻も早い賠償と、救済の仕組みの創設が必要だと語った。
〈写真〉建設石綿被害の「命あるうちの解決」のために、今こそ政治決着が必要だ(9月20日、国会内)
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