官製ワーキングプア研究会は9月10日、国会内で集会を開き、自治体で働く非正規職員の公務災害補償制度の改善を提起した。総務省は7月20日付で、非正規職員も公務災害申請が可能な規則モデル案に改正し、各自治体で必要な見直しを行うよう通知した。公務災害の請求拒否で北九州市を訴えている元嘱託職員の遺族も出席し、野田聖子総務相との面談について報告した。
研究会は4月、職員安全衛生管理体制と臨時・非常勤職員の公務災害補償の実情について自治体にアンケート調査を実施し、対象の165自治体中、98自治体が回答した。非現業の臨時・非常勤職員が被災した場合、当人や遺族が公務災害の申し出をできるかどうかについては、23自治体が「条例によりできない」と回答。非正規職員に救済の道を閉ざしている実態が明らかになった。
研究会は、勤務形態などによって異なる補償の仕組みを一元化するための抜本的な地方公務員災害補償法改正を提起した。当面は労災保険の対象にすることも考えられるという。自治体に対しては(1)総務省通知に沿った施行規則の改正と周知徹底、適正な運用(2)職場実態に合わせて臨時・非常勤職員らを安全衛生委員に選出(3)被災日から休業補償8割を支給(4)常勤職員並みの公務傷病休暇制度の適用(5)死亡、障害見舞金制度の運用改善――を求めている。
総務省の臨時・非常勤職員実態調査結果(2016年)から推計すると、全国の臨時・非常勤職員のうち約22万人(33・7%)に今回の通知が影響するという。公務災害の請求拒否で遺族が裁判を起こした北九州市では55・6%の約1600人が対象になる。上林陽治理事は「規則改正は議会にかける必要がないので作業が進んでいる。埼玉県熊谷市と鹿児島市では既に改正された」と報告した。
●野田総務相と面談
上司からパワハラを受けて過労自死した北九州市の元嘱託職員・森下佳奈さんの遺族が同日、野田聖子総務相と面談した。遺族は公務災害の請求を北九州市に拒否されたため、裁判で争っている。
母の森下眞由美さんが7月に野田大臣宛に手紙を送ったところ、大臣本人から直筆の返事が届き、面談が実現した。森下さんは手紙を送った動機を「野田大臣が非常勤や女性の働き方について話しているのをテレビで見て、私たちの話を聴き、条例(規則)を変えてくれるかもしれないと思った」と明かした。
野田大臣はあくまでも一人の母親として面談したという。森下さんは「母親同士が向かい合って話をした感じ。娘が亡くなってからつらいことばかりで、主人と3年間泣き続けましたが、良い時間を過ごせた」と語った。
総務省の通知が裁判に与える影響について、代理人の佃祐世弁護士は「通知は総務省の判断であり、北九州市がこれまで改正しなかったことは違法ではないという反応が想定される」と客観的な見解を示した。
通知によって規則改正が進み、申し立ての門前払いがなくなるとした上で「実際に公務災害認定されるかどうかは疑問。認定されなければ訴訟になり、時間がかかる」と述べ、運用実態のチェックを呼び掛けた。
〈写真〉野田総務相との面談のもようを語る森下さん(9月10日、国会内で)
コメントをお書きください