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    実効ある労働時間上限を/学校における働き方改革/文科省の中教審部会で論議

     文部科学省の中央教育審議会・学校における働き方改革特別部会が8月30日に開かれた。労働安全衛生管理のあり方について論点整理を行った上で、どうやって残業を抑制するかの議論をスタートさせた。勤務時間の上限目安を含めたガイドライン策定が想定されている。特別部会が始まってから1年。ようやく長時間労働の「本丸」に着手した。

     委員からは勤務時間の上限目安をガイドラインで示すことに賛成しつつも、実効性を懸念する声が多く上がった。学校現場の委員からは、持ち帰り残業を助長する危険性、客観的な時間管理が不十分との指摘が相次いだ。時間外業務の内容や認定方法、休憩時間取得など、教員の働き方の特殊性を踏まえた内容を求める意見も出された。

     学校マネジメントコンサルタントの妹尾昌俊氏は「理想と現実のギャップが大きすぎる。働き方改革関連法で時間外上限は月45時間と定められたが、小中学校では月80時間を超える教員が多い」と指摘。「目安という表現でいいのか。自治体が条例で上限を定める方向にしなければ、ガイドラインはただの紙切れになる」とも強調した。

     佐古秀一鳴門教育大学副学長は、ガイドラインを示すことは意義深いとした上で「学校側は、上限目安を守れる施策が(文科省に)あると捉えるだろう。教員の仕事が上限以下に収まるめどを付けなければいけない。同時に教員数を増やさなければ、(残業抑制は)難しいのではないか」と語った。

     

    ●変形労働時間制導入か?

     

     毎日新聞で、文科省が1年単位の変形労働時間制導入の方針を固めたと報道されたことも話題になった。文科省の担当者は方針を固めた事実はないと説明。「今後の制度検討を行う際の選択肢の一つ」と強調した。

     教職員への1年単位の変形労働時間制導入は、自民党の教育再生実行本部が今年5月、提言に盛り込んだ。東京都は来年度の国への提案要求で、教職員に変形労働時間制を導入できるよう、給特法改正などを求めている。

     給特法は原則として、残業を認めず手当を払わない代わりに、月額4%の調整給を支給するという法律で、公立学校教員に適用されている。その第5条で、地方公務員法同様、労基法の1年単位の変形労働時間制(第32条の4)を適用除外としている。

     都内の小学校校長の嶋田晶子委員は「小学校では英語やプログラミングで授業数が増えた。(1年単位の変形労働で)夏休みにまとめると考えても、学期中の健康管理、勤務状況をどう改善するかをガイドラインで示すべきではないか」と述べた。