「機関紙連合通信社」は労働組合や市民団体の新聞編集向けに記事を配信しています

    〈沖縄レポート〉/辺野古の埋め立てか撤回か/日本の命運も左右する知事選

     台風接近で雨が降り続く中、「辺野古新基地建設断念を求める8・11県民大会」が那覇市の奥武山公園陸上競技場で開かれた。集会は、政府が17日以降と予告した辺野古の海への土砂投入を阻止しようと計画されたが、8日に翁長雄志県知事が急逝したため、知事の遺志を受け継ぐことを確認する場ともなった。登壇者の一人、山城博治沖縄平和運動センター議長は「なぜこれほどまでに沖縄に試練が続くのか理解できない」と述べ、さらなる試練に立ち向かう決意を示した。

     その試練の一つが、翁長知事の遺志を受け継ぐ後継候補の人選、擁立だった。翁長出馬を前提としていた「オール沖縄」勢力は、ゼロからのスタートになったからだ。

     

    ●決着をつけられるか

     

     紆余(うよ)曲折を経てようやく衆議院議員の玉城デニー氏(自由党)に一本化し、29日に正式に出馬表明の予定だ。相手は宜野湾市長を辞職して立候補を表明している佐喜真淳氏である。知事選と同日に行われる宜野湾市長選も「オール沖縄」候補がようやく固まり、一騎打ちの構図が決まった。知事選前の9月9日に投開票を迎える名護市議選、宜野湾市議選、10月には豊見城市長選、那覇市長選が控えている。沖縄は選挙の喧噪(けんそう)の中で、再び自らの運命を決することになる。

     佐喜真氏が普天間飛行場の早期返還を大義名分とするのに対し、名護市を含む衆院沖縄3区で選挙を勝ち抜いてきた玉城氏は、県内移設=新基地建設の阻止を最大の争点とするはずだ。宜野湾市は衆院沖縄2区。2区と3区の立場の違いが知事選の構図にもなる。

     佐喜真氏が普天間飛行場返還の時期をどう示すのかも興味深い。辺野古新基地が完成し、米軍の移転が前提だとすると何年先になるか分からない。その間、事故の危険にさらされ続けるのだから。

     今度の知事選が辺野古新基地問題の決着につながるかどうかは見通せないが、今度こそ、決着をつけたいと、いずれの陣営も考えているだろう。

     

    ●沖縄の試練は続く

     

     知事選が早まったことで、政府は選挙が終わるまで土砂投入を先延ばしするのではないかという観測が流れている。知事不在の現在、撤回権限は謝花喜一郎副知事が持つ。市民団体などは即時撤回を求めており、いつ「撤回」カードを切るか、国はどう出るか、神経戦が続いている。

     沖縄は、知事選と「埋め立てvs撤回」が同時進行する状況にある。さらに全国的に見れば、安倍首相が3選を目指す自民党総裁選もある。9月は沖縄と日本の運命を左右する重大局面にある。選挙の結果がどうあれ、沖縄の試練がここで終わることはないだろう。(ジャーナリスト 米倉外昭)