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    〈働き方関連法での連合東京セミナー〉上/「月45時間超えは年6回」厳守を/水町勇一郎東大教授が講演

     働き方改革関連法が来年4月以降順次施行される。同法の策定に深く関わった水町勇一郎東京大学社会科学研究所教授がこのほど、連合東京の学習会で講演。残業の上限規制や、非正規労働者の処遇格差をめぐる最高裁判決などについて熱弁を振るった。上限規制では時間外労働が45時間を超える月が年6回を超えてはならないという規定に注意を呼びかけた。

     

    ●業務見直しとセットで

     

     改正労働基準法では新たに残業の上限規制が設けられる。施行は2019年4月、中小企業については20年4月となる。

     時間外労働の上限時間を原則月45時間、年360時間としていた従来の大臣告示と、例外的にそれを超えて働かせることが認められる特別条項(年6回)についての告示を、法律の条文に格上げした。

     ただ、臨時的な事情の場合、時間外労働は(1)労使協定を結べば単月100時間未満、2~6カ月平均80時間以下(休日労働を含む)まで可能(2)年間では720時間以下(3)45時間を超える月は年6回まで((2)(3)は休日労働を含まない)――とした。

     水町教授は(3)の規制が守られにくいのではないかと指摘。「従来の監督行政は(立ち入りした事業場に)3カ月分の労働時間記録の提出を求めていたが、施行後は過去1年分を求めることになる。年間スケジュールを作成し、守れる状況にする必要がある。そのための業務の見直し、人員配置をしっかりしなければならない」と対応を促した。

     

    ●年休の管理を万全に

     

     改正法は年次有給休暇5日を取得させることを使用者に義務付けた。これは企業の規模に関係なく来年4月の施行だ。(短時間労働者については所定労働日数によって付与日数が決まる)

     年休は通常、労働者が時季を指定して取得するが、年5日については使用者が労働者の希望を踏まえて時季を指定し、取得させるという新たなルールである。あらかじめ年休取得日を決める「計画年休」を行っている職場では、それを代用することも可能だ。

     問題は、年休取得の権利発生日は中途採用などによりまちまちとなるため、管理が煩雑になりがちなこと。そのため、改正法のただし書きでは、法の規定より繰り上げて年休を与える場合、例えば4月に年休発生の起点を合わせて一括管理することも可能とした。

     違反した場合、使用者は罰金30万円か懲役6カ月以下の罰則が課される。水町教授は「多くの中小企業は就業規則を改定しなければならない。義務を履行できる内容か、注意が必要」と指摘。夏季休暇など既存の特別休暇を年休に改めることについては、不利益変更になるため、受け入れてはならないと戒めた。