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    ライドシェア規制条例が成立/米ニューヨーク/「運転手困窮と交通渋滞招く」

     米ニューヨーク市のデブラシオ市長は8月14日、市議会が可決したライドシェア規制条例に署名した。これにより同市は全米で初めて、ライドシェア車の台数を制限し、運転手の実質的な最低賃金を設けることになる。

     市長は、3年前にも同様の規制をニューヨークタクシー労働者連盟(NYTWA)などとめざした。しかし、ライドシェア大手のウーバーやリフトは、数百万ドルを投じてロビイストを大動員し、その行く手を阻んだ。

     

    ●運転手6人が自殺

     

     当時1万2600台だったライドシェア車は、現在8万台を超える。この供給過剰で運賃収入が激減するなど、生活苦を理由に昨年11月からたて続けに6人のハイタク運転手が自殺している。ライドシェア運転手も困窮しており、その85%は収入が、同市の最低賃金(今年時給15ドル)に届かないレベルだ。4割が空車走行しているため、交通渋滞が悪化している。

     条例では今後1年間は原則、ライドシェア車両の新規登録を認めない。その間、同市の規制機関であるタクシーリムジン委員会が、交通渋滞の実態調査を進め、ライドシェア運転手の最賃を策定。過当競争を防ぐため、ハイタク・ライドシェア全てのサービスに共通する最低運賃も導入される。台数制限は1年後も続くとする見方が強い。離職率が年間25%のウーバーやリフトは、運転手の処遇改善を迫られる。

     自殺したハイタク運転手ダグラス・シフターさんの追悼集会を2月6日に開いたNYTWAはそれ以降、ライドシェア規制を求め、精力的に集会や街頭行動を繰り返した。サービス労組(SEIU)32BJ支部の支援も受け、街ぐるみの運動をつくっていった。闘いは、タクシーとハイヤー、ライドシェア運転手の壁を取り払った。

     「一番つらい立場の遺族たちが、その経験を公にした。休めば収入のない運転手たちが、家族を連れて集会にやってきた」とNYTWAのバイラビ・デサイ代表は振り返る。条例のほぼ全てが組合の要求に沿った内容だ。

     

    ●市議会も変化

     

     ウーバーやリフトは今回も反対キャンペーンを展開したが、条例案を修正できなかった。自殺者が相次ぐ事態を受け、3年前は両社に同調した市議会議員も、規制賛成に回った。

     ウーバーの新規株式公開を来年に控え、投資家の間では早速こうした動きが他市に波及することを懸念する声が上がっている。

     7月には、同州の失業保険不服審査委員会が「ウーバー運転手は請負ではなく、労働者であるから、失業保険の受給資格がある」という州労働委員会の判断を支持した。同社はこれで2連敗だ。州裁判所へ上訴したが、ここでの審理が最後となる。(国際運輸労連内陸運輸部会長 浦田誠)