職場での不当な扱いやトラブルを解決する上で労働組合(ユニオン)に加入することの効果が、また一つ証明された。首都圏青年ユニオンが悪質な会社を相手にしたケースで、交流サイトのSNSを活用して世論に訴える戦術が功を奏したという。同ユニオンが8月5日に開いたブラックバイトに関するトークイベントで紹介された。
●会社から脅された
パートナーズダイニング社が経営する「監獄レストラン ザ・ロックアップ」でアルバイトしていた大学生が「年次有給休暇を消化してからバイトを辞めたい」と店長に連絡したところ、「不正行為がある。学校や警察に連絡する」と脅されたのが発端だった。
身に覚えのないことで自分ばかりが叱責(しっせき)される状況に疑問を感じ、辞めると決意し、年休消化を申し出たAさん。店長に脅されたため、首都圏青年ユニオンに加入した。昨年3月の問題発生から2回の団体交渉を経て和解を勝ち取っている。
当初はユニオンの存在を知らなかったが、「アルバイト・問題解決」というキーワードをネットで検索し、労働基準監督署などの行政に相談する中で、首都圏青年ユニオンの存在を知ったという。
同ユニオンの原田仁希委員長は「ブラックバイトの被害に遭った場合、高校生や大学生はまずネットで情報を集め、ユニオンにたどり着くケースが多い」と話す。原田委員長によれば、被害者がユニオンに相談して事実関係を確認した時点で、解決に動く会社が多いものの、この会社は逆にAさんを「刑事告訴する」などのどう喝を続けた。
●組合員が団交支援
Aさんの団体交渉には、ユニオンの組合員約20人が参加した。「心細く思っている仲間を応援するシステム」(原田委員長)で、職場の異なる組合員同士が争議を通じて連帯できるメリットがあるという。Aさんは「『不正を学校に言うぞ』と脅されて精神的にストレスを感じていたが、団体交渉に大勢の組合員が来てくれて、とても心強かった」と語った。
●SNSで社会問題化
団体交渉ではらちが明かなかったため、ユニオンは店長がAさんに送った「警察や学校、家族に連絡する」というSNSのメッセージ画面をツイッター上で公開した。これが「大学生アルバイトをどう喝するブラックバイト」として大きな反響を呼んだ。ネットニュースの記事にも取り上げられた。
すると、会社側から和解の話が持ち出され、解決に向かった。原田委員長はこう振り返る。
「SNSでの拡散は最後の手段と位置付けているが、交渉中も会社側の態度が悪く、社会的な問題にしなければ応じないと判断した。会社は悪いことをしてるという自覚があるので、社会的に問題にされるのを避けたがる。独りでは難しいが、組合に入れば不正なことは全部公にして対抗できる」
Aさんは「最初はもめごとにしたくないなと思ったけど、一歩踏み出す勇気があれば円満に解決できるんだと分かった」と語った。
〈写真〉ユニオンが公表したSNSのメッセージ画面。ネット上で大きな反響があった
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