2018年度の地域別最低賃金改定の基礎となる引き上げ目安が7月25日未明に固まった。政府と連合、経団連が合意した「働き方改革実行計画」や、政府の未来投資戦略などが示した目標に沿い、平均3・1%、同26円の引き上げ。目安をそのまま当てはめれば、全国加重平均額は874円で、19県が800円未満にとどまる。地域間格差はさらに広がり、最大の時給格差は225円に。
目安は3年連続で政府が示す「3%」の引き上げとなり、3年連続で最高額を更新した。東京などAランクが27円、京都、広島などBが26円、北海道、新潟などCが25円、青森、沖縄などDが23円。これを基に都道府県の地方最賃審議会で改定額を決め、10月1日の発効をめざす。
厚生労働省の中央最低賃金審議会目安小委員会で公益・労使の3者が4回審議を重ねた。連合によると、労働側は「2020年をめどに800円以下の最賃をなくし、Aランクは千円への到達を」として35円引き上げを要求。使用者側は中小企業の経営の厳しさを理由に「支払い能力」に応じた引き上げを主張した。
第4回審議は24日、昨年より1時間早い午後2時に開始したが、決着は翌25日午前0時10分。同省によると、地域間格差を1円でも縮めるためDランクの底上げを求めた労働側と、零細企業の賃上げ率を示す「第4表」を根拠にすべきとした使用者側の主張が平行線をたどり、調整が難航したという。
目安通りに改定されると、東京と最低県との地域間格差は4円広がり225円に。年間1800時間では格差は40万円を超える水準だ。
〈解説〉格差縮小、公開が課題
今年も政府の意向をくんだ決着となった。政労使合意や政府のイニシアチブによる引き上げだが、問題はその上げ方である。
2010年の民主党政権時の政労使合意「雇用戦略対話合意」では「できる限り早期に全国最低800円、2020年までに全国平均千円」の実現を掲げた。この「早期800円」は当時の連合担当者によると3年を想定していた。だが、東日本大震災と、同政権の失速、自公政権復帰を経て、合意は顧みられなくなった。結果、全国最低800円実現は大幅に遅れ、このペースだと2020年の達成さえ絶望的といえる。
安倍政権は3%程度を引き上げて全国加重平均千円への到達を掲げるが、地域間格差解消の観点はない。また、ランク制で目安を決める現行ルールは格差を前提としており、格差縮小は難しいのが実情だ。
地域間格差の拡大には、若者の人口流出を問題視する声が地方行政から出ている。山形県は6月、「ランク制の廃止」「全国一律」を国に要望、福井県知事も経済誌(電子版)で全国一律千円への引き上げが必要との自説を展開し、関係者の注目を集めた。底上げによる実額の格差改善が急がれる。
決め方の問題では、今年も審議非公開とされた。国の政策を決める過程が明らかにされないことに対し、日本弁護士連合会をはじめ地方弁護士会、非連合の労組から、問題視する声が年々強まっている。政策への理解と納得の点でも問題は多い。労使が堂々と主張し、検証に耐えうる審議に改善する必要がある。
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