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    〈プレカリ専従日記〉仲間に寄り添うユニオンとは/ある若者の争議から考える

     会社を解雇された測量士志望の若者が、神奈川県内の個人加盟ユニオンに加入したら、本人に日時さえ知らせないまま団体交渉が行われ、本人の意向も確認せずに退職和解を合意してしまうという事案があった。昨年9月のことだ。

     

    ●団交再開し、決着

     

     そのユニオンと会社は和解協定書で(1)月末付で退職する(2)解雇予告手当程度の解決金を支払う(3)本人に対し測量士経験証明書(測量に関する実務の経歴証明書)を実態に即し発行する――ことを合意していた。しかし、会社は合意事項を順守しなかった。証明書は実態に即さず、資格取得の要件に満たない日数を記載したものだった。

     本人は不満を持ちつつ、そのユニオンに「合意事項が順守されていない」と何度も訴えた。しかし相手にされず、「自分で会社に伝えろ」と言うばかり。その後、悩みに悩んで、プレカリアートユニオンに加入した。

     私たちは会社に対して、前のユニオンとの合意事項を守り、正確な日数での証明書を発行するよう要求し、団交を開催した。団交では、決裂した場合のあらゆる可能性について説明し、感情的になる社長に合理的な判断をするよう促した。粘り強い説得の結果、社長は正しい日数での証明書発行を約束し、協定書を取り交わした。必要な経歴証明書が発行されたことで、この若者は無事、測量士になることができた。

     

    ●権利主張学ぶ場にも

     

     本人からは「前のユニオンが合意事項を順守させないまま投げ出して終わりにした時は、もう駄目だと思い絶望したが、そこから、正確な日数の証明をしてもらえるように交渉してくれたことを感謝する」という、熱いメールが届いた。

     この組合員は、一時期就労した別の会社の賃金不払い問題についても交渉し、支払いを実現させている。本人は組合に貢献したいとのことで、大争議になっている会社の店舗周囲にチラシ3千枚をポスティングしてくれた。

     プレカリアートユニオンには、「ビラまき職人」が何人もいて、解決のための大きな力を発揮してくれている。みんな、過去に交渉して自分の労働問題を解決した人たち。今、大変な仲間のためにと、手を差し伸べてくれているのだ。

     ユニオンは、職場で直面した理不尽を解決しようと、ともに闘うなかで、弱い立場の労働者が権利主張の具体的方法を身に付ける、学校のような場にもなるはず。仲間同士で交渉先へのアクション(直接行動)を計画し、街宣車も活用しながら、週2、3回のペースで、多いときは週5日以上、独自のアクションを行っている。それが交渉中の案件の解決を早めてもいる。(プレカリアートユニオン委員長 清水直子)