6月28日に成立した「働き方」関連法に関する省令など制度の詳細を議論する労働政策審議会(労政審、厚生労働大臣の諮問機関)の労働条件分科会が7月10日に開かれた。使用者側は、不適切データ問題で法案から削除された裁量労働制の拡大について「拡大法案の早期の再提出」を求め、労働者側が「拡大は必要ない」と反論するなど、早くも労使の激しい攻防を予感させる展開となった。
●裁量労働制に固執
この日の議題は関連法の詳細に関する議論の進め方について。審議会では、裁量労働制の不適切データについて、厚生労働省事務局が謝罪した。使用者側の委員の一人は「企画型裁量労働制の削除は大変残念」と発言。その上で「裁量労働制自体は柔軟で多様な働き方の選択肢を広げるもの。生産性の向上に寄与すると期待している。対象業務の拡大について法案の早期再提出の環境が整うようにお願いしたい」と要望した。
連合総合労働局長の村上陽子委員は「データがどうであろうと、拡大については必要ないと考える」と反論した。
●調査方法も議論
村上委員は「裁量労働制に関する調査の方法や内容についても議論したい」と要望した。
公益委員の黒田祥子早稲田大学教授は「裁量労働制のような働き方は比較的長時間労働になりやすい。同一個人を追跡調査して、制度適用の前後で労働時間がどう変わっていくかを見なければ判断するのは難しい」と、これまでの厚労省の調査方法について疑問を呈した。
●2段階で議論へ
同分科会では来年4月からの法律施行に向け、罰則付きの上限規制や有給休暇取得をまず議論し、その後に高度プロフェッショナル制度(高プロ制)などを審議する、2段階の検討方針を確認した。
経団連労働法制本部長の輪島忍委員は「一日でも早く省令と指針を示さなければ、(上限規制などに対応した)来年度からの勤務システムづくりに間に合わない」とし、2段階に分けた議論に賛成した。労働側の村上委員も2段階の議論には理解を示しつつ「高プロ制についてまで、できるだけ早くとは考えていない。きっちりと労政審で議論していく」と述べた。
●着実な中小対策を
労働者側からは、上限規制の先送りや別扱いとなった分野での労働条件改善に向けた要望が相次いだ。
中堅中小の金属製造産別JAM副書記長の川野英樹委員は「時間外労働の上限規制で中小企業に猶予(1年先送り)が与えられた内容は遺憾」と指摘。「中小企業で働く人は全労働者の7割を占めている。上限規制が施行されるまでの間、中小企業が労働環境を整備できるよう厚労省は着実な対応を」と述べた。
運送会社の労組でつくる運輸労連副委員長の世永正伸委員は、自動車運転者の総拘束時間を定めた改善基準告示の早期見直しについて「衆議院の付帯決議にも明記されており、スピード感を持ってやってもらいたい」と訴えた。
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