政府が最重要法案と位置づけた働き方改革関連法案が6月29日、延長国会で、自民、公明、維新、希望の賛成により成立した。過労死してもおかしくない水準での罰則付き残業上限規制を設けるほか、労働時間の保護を全てなくし「過労死促進法」「残業代ゼロ制」と呼ばれる高度プロフェッショナル制(高プロ制)を導入する。労働者にとって不十分な「改正」を行う一方で、ついに労働者保護規制に大きな穴を開けた。
関連法は労働基準法、労働契約法など8本もの改正法をまとめた。残業時間の上限規制や、雇用形態間の不合理な格差を禁じる改正など、「政労使」で合意した法律と、高プロ制など労働側が猛反対した法律をひとくくりにして国会に提出し、労働側に足並みの乱れを生じさせた。
上限規制は繁忙期について月100時間未満、2~6カ月平均80時間を上限とする。初の規制だが、水準は国の過労死認定基準だ。大企業は19年4月、中小は翌年4月施行。最低基準を定める労基法にまた「二重基準」を設けた。
高プロ制も来年4月施行する。残業、深夜、休日の規制をなくし、48日間24時間連続労働を命じても違法ではない。「成果で賃金を支払う」との政府の触れ込みは、法律に何の保証もない空証文だ。年収1075万円以上の要件は見込みでよく、高度の知識を持つ専門職という業種要件は省令任せ。「過労死が増え、労災認定は減る」との懸念は全く解消されなかった。
高プロ制からの離脱は、不利益を防ぐ手立てが不十分。新入社員を採用する際に高プロ制を選ばせることも可能だと、答弁で明らかになった。使用者に罰則がないのも特徴だ。
●看板とは裏腹に…
「同一労働同一賃金」と呼ばれる労契法改正などは20年、中小は21年に施行される。雇用形態間の不合理な格差を禁止し、手当や福利厚生に一定の改善が見込まれるが、肝心の基本給は転勤の有無による格差が容認される。処遇を引き下げることによる格差の解消を防ぐ規定もない。
雇用対策法の改正では、「労働生産性の向上」が雇用政策の中心に置かれる。労働強化やリストラ推進が懸念される。
首相が胸を張った「働き方改革国会」。だが、裁量労働制はデータ不正が発覚し、営業職への適用拡大は先送りに。高プロ制ではわずか12人の聞き取りを根拠に「労働者のニーズ」を強弁した。加藤勝信厚労大臣のはぐらかし答弁に「ご飯論法」という造語もインターネット上をにぎわせた。看板の格調の高さとは裏腹にその内実は、働く人の命と健康に無関心で、不誠実な現政権の姿勢が表れた国会審議だった。
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